COZY922

ホノカアボーイのCOZY922のレビュー・感想・評価

ホノカアボーイ(2008年製作の映画)
3.7
舞台となったハワイ島はもちろん、オアフ島でもノースショアや途中の小さな町はワイキキの喧騒が噓のように素朴で静か。緩やかな空気となにげない美しさに溢れていてとても好き。

ようやくホノカアボーイを観た。訪れる場所としての田舎町は好きでも、スローライフを謳った緩いテンポの映画となるとやや苦手で観るのを先送りしていた。美しい自然や人々の笑顔、マイペースのライフスタイルなど想像していたものがそこにあっただけでなく、若さの持つ残酷さや高齢者の現実もさりげなく描かれていて、切なくて温かい余韻が残った。

ビーさんのレオへの思いは少女のような淡い恋心。手料理を美味しそうに食べるレオを見る彼女の眼差しが温かっただけにピーナッツの場面はちょっとショックだった。客観的に見たら息子どころか孫みたいな年齢の男。だけど、想像もつかないのが人の気持ち。理屈じゃ説明できないのが人の気持ち。レオの若さゆえの無神経さと無邪気さ。密かに傷つくビーさんの出来心。違和感と切なさをブレンドしたようなざわざわ感と、彼女の作るご飯やハワイのブリーズのような温かさ心地よさが頭の中で入り乱れて複雑な気持ちになった。雰囲気映画だと思って観始めたけれどそうではなかった。

彼らのいる町ホノカアは高齢者が多い。生活していれば綺麗ごとではない出来事も起きるし、怪我もすれば病気にもなる。1人の怪我が他の人の仕事や生活にも影響する。そんな当たり前の日常も淡々と丁寧に描かれていた。

この映画は五感にもアプローチしてくる映画だ。可愛いコーヒーカーテン、ナチュラルテイストのキッチン、レトロなお鍋、スパイス類の並ぶ棚、美味しそうなマラサダとご飯。包丁の音、ページをめくる音、ほうきで掃く音、髪をカットするハサミの音、ポップコーンが弾ける音。視覚と聴覚だけでなく、テーブルに並ぶ食事に味覚や嗅覚を優しく刺激された気分になる(笑)。

生活を彩るものや音たちがハワイの風と一緒になって、そこに暮らす人々の喜怒哀楽を包み込むような映画。
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