しんご

クイズ・ショウのしんごのレビュー・感想・評価

クイズ・ショウ(1994年製作の映画)
4.0
「ヲタクと博識の違いは何ですか?」という質問をネットで見たとき「言ってる人がイケメンかどうか。」という若い女性の回答に思わず笑ってしまったことがある。その賛否はともかく、少なくともTVの娯楽番組において出演者の容姿は重要なんだなとつくづく痛感する作品がこれだ。

50年代のアメリカにおける人気クイズ番組「21」の製作者が、特定の人物を王座に据え置き続けるためにクイズの解答を日常的に歴代チャンピオンに漏洩したスキャンダルをロバート・レッドフォードがメガホンを執り映画化した作品。

本作で最初のチャンピオンとして登場するのはユダヤ人のハービー・ステンペルだが、この男の「華」の無さたるや。神経質なクイズヲタで、目には度の強そうなメガネをかけ体型はややメタボ。ユーモアのセンスがあると思い込むが、実際は一言多く空気の読めない残念な人。このクイズ馬鹿ハービーをTV側が疎む所からストーリーが始まる訳だけど、彼を演じたジョン・タトゥーロの熱演が凄い。あのウザそうな喋り方はたしかに肩持ちしたくはなくなるよね。

そんな彼の前に現れたクリスチャンの大学教授チャールズ・ヴァン・ドーレンの爽やかさの対比が物語を印象付ける。若き日のレイフ・ファインズは容姿端麗で知的なスマイルがチャールズにピッタリ。調査官のディックが惚れ込むのも分かる好青年振りを見せてくれた。

教授といえども週給86ドルと薄給のチャールズは多額の賞金と「教育的見地」の口車に乗せられ不正に加担していく。メディアの寵児となり浮かれてから一転、徐々に良心の呵責に耐えかねるチャールズの内面を絶妙な芝居で表現するファインズもタトゥーロと同じく巧い役者さん。

さらに面白いのは、50年代からTVの仕組みって何も変わらないんだなという虚しさ。TV局やスポンサーは不正を知らぬ存ぜぬで、プロダクションをとかげのシッポの様に切り離しまた新しい番組を製作する。切られたプロダクションも謹慎の後また業界に復帰して新しい番組製作に携わる、という図式はまさに不正の温床。「TV局とスポンサーは儲かった。出演者は大金を稼げ視聴者は大喜び。誰が損をします?私達は犯罪者ですか?TVは公益事業じゃないんです、ショービジネスなんですよ!」...このセリフが刺さる。

本作の唯一の救いはチャールズの様に心を痛め後悔し、ディックの様にTVの不正を徹底的に糾弾しようとした人達がいたこと。現代ではこういう良心の強い人間の方が既に化石でしょうか...?

余談だが、古畑任三郎で唐沢寿明が出演していた「クイズ王」(96)のエピソードは三谷幸喜が本作にインスパイアされ書き下ろしたものらしいです。
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