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ベルリン・アレクサンダー広場のSiosのレビュー・感想・評価

4.5
苦痛を浴び続け、絶望に沈んでいく。
ビール、コニャック、キュンメル。酒、女、犯罪、暴力の繰り返し。その度に目覚め、また壊れ、その右腕でしたこと、されたことを反芻する。痛切の時間。

第一次大戦後、1920年代後半の不安定なドイツ・ベルリン。
恋人イーダを死なせた罪で刑務所から出てきたフランツ・ビーバーコップは、何やってもうまくいかないというか、うまくいきそうにないことばかりに手を出す。失業、インフレ、ナチ、ユダヤ、共産主義と色々巻き込まれる。
最も真面目なベッドシーンは衝撃的。噛み付き癖がチャーミング。

中盤以降、チンピラ一味に関わり始め、盗みにも手を染め、集会に顔を出し、ヒモになり、どうしようもない状況と閉塞感が漂う。ラインホルトという男が登場するが、彼が抱える女の病気は深刻。なぜか恩恵を受けるタマをアレしたじいさん。
ワキを開放する元恋人エヴァ、ビール飲みながら出すフランツ、常に目撃者となるバーストおばさんなど続く混沌。
何度も流れるテーマ曲が馴染んでくるし、セリフと詩、セリフと別の映像を重ねるのも面白い。

そして運命の場所に三人が会することになり、ある出来事を機にもう流れは止められなくなる。身を隠すラインホルトの胸中は想像を超えるものだろう。
ミーツェの狂った愛の暴走、フランツのラインホルトへの感情の果てに、底無しの訳のわからない境地に到達。
エピローグの園は、ビーバーコップという一人の男に何が起き、彼はどうなったかを超越。凡そ1年間に起きたこととは信じられない。

物語や登場人物は醜く虚しくても人間的に思えて、各話のラストショットは驚くほど美しい。
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