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そして、私たちは愛に帰るのemilyのレビュー・感想・評価

そして、私たちは愛に帰る(2007年製作の映画)
4.1
ドイツ、ブレーメン、妻を亡くした定年を迎えたアリは、娼婦の女イェテルとお金を渡して一緒に暮らすことになる。一人息子ネジャットはハンブルグで大学教授をしていて、二人の同性には反対だが、イェテルが一人娘に仕送りをしてることをしり、少し心を開いていく。イェテルの死からイェテルの娘を探し始めるネジャット。そこから娘アイテンの政治活動、トルコに残ることにしたネジャットだが、すでにアイテンはドイツにわたっており、そのすれ違いや悲劇などが描かれ、ドイツとトルコをめぐりすれ違う3組の親子の悲しみと再会までを描く。

 3部に分かれており、2部までは死により終わりを迎え、3部の最終章では、失った後の再会へと、ドイツとトルコをめぐり壮大なストーリーを膨大な距離を超え、嫌みのないスピード感で、それでいて想像できない展開を見せてくれ、最後には心が温かくなるような、終わりから始まる希望を見せてくれる。

 物語に交差するトルコ・イスタンブールの閉鎖的かつ、そこからこぼれるぬくもりが、物語の展開の悲しさの中からあふれる、人間の根本にある愛が切なく美しくマッチしている。

 物語には被害者がいて加害者がいる。しかしそれは意図的なものではない。一番望んでいない本人が愛する人の死の原因に繋がってしまう刹那。その罪悪感は払拭できないが、愛するものの家族がそれを受け入れ許してくれたなら、未来への希望は広がっていくのだ。許しても許さなくても人生は続いていくし、失った物は戻ってこない。その死は何かの生に必ずつながっていく。だからこそその生を大事にして生きるほうが自分自身の心も救われるのだ。単純なようで単純ではない。しかしすべてを失ったとき、愛する人が残した大切なものを大事にできる優しさが残る。

 生み出された悲劇の悲しみと憎しみの中から、優しく浮き彫りにさせる人間のぬくもりが美しく、そこには希望の光のみが残る。思い通りにはいかないし、願ってもないところで誰かの死に加担してしまうこともあるだろう。それでも人として自分に正直になることができれば、悲しみの果てに許しという与えられた愛の形が残るのかもしれない。