さわだにわか

影の爪のさわだにわかのレビュー・感想・評価

影の爪(1972年製作の映画)
4.5
脚本は白坂依志夫・大野靖子・桂千穂の三人連名だがこのニューロティックな展開は桂千穂の色が特に良く出たものではないかと思う。

酔った男を轢き殺したプチセレブの家に遺族(岩下志麻と鈴木光枝)が転がり込んでくる。
どうも家の乗っ取りを企んでいるように見えるが、そのへん仄めかしつつも決して尻尾を掴ませない周到さで、観客としては遺族を疑うセレブ妻の言い分を信じたくなってしまうものの確たる証拠は画面に出てこない。

「あの人って、俺の名前を言ったのかい?」「言ってないけど…」「じゃあ他の男のことかもしれないじゃないか」
この会話なんて見事にやられましたね。確かに名前、出してなかったもんなぁ。

信じるべき現実を失って真空状態になった内面を表すような一面真っ白に塗りたくられた部屋に転がる死体、血の鮮烈。このあいだ観たロブグリの「快楽の漸進的横滑り」を思い出してしまった。

白昼夢のようなラストはかっこよし。岩下志麻のザ・魔性な着物の着こなしと着崩しっぷりも完璧。おもしろかった。
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