こたつむり

やかまし村の春・夏・秋・冬のこたつむりのレビュー・感想・評価

3.9
★ 今日も、明日も、明後日も
  緩やかに流れる間に間にきみの笑顔

前作に引き続き、ヤマもオチもない物語。
ただ子供たちの日常風景が流れるだけなのに…相変わらずニヤニヤが止まらない作品でした。

日常は途切れることがないから日常。
前作から地続きで繋がっているだけで良いのです。例えば、ママの靴が出来上がっていないこと。お爺ちゃんに新聞を読んであげること。そんな些細な事柄で「この村に帰ってきた」という気持ちになれるのです。

だから、評価も甘くなりますよね。
リサが、ラッセが、ボッセが、オッレが、アンナが、ブリッタが。子供たちが健やかに育ち、笑顔がこぼれる様は目尻が下がって仕方がありません。

この表情をフィルムに収めた手腕は見事な限り。ラッセ・ハルストレム監督の優しさが画面の端々から伝わってきました。

ただ、本作が前作と違うこと。
それは幾ばくかの緊張感でした。
前が見えないほどの猛吹雪。天然スケート場での危険。幼児の面倒を子供たちだけで見ること。それは彼女たちが成長したからこそ、直面する事象。守られているだけでは大きくなれないのです。

また、邦題にあるように村の情景も主役。
秋の収穫、クリスマス、雪解け水、土の下から芽吹く命…と巡る四季を肌で感じ取れるからこその感動。そして、本作では可愛らしいヒツジも登場し「メエメエメエメエ」と人になつく姿に心が温かくなりました。

まあ、そんなわけで。
カエルが王子様だったり、溶けた鉛が自転車だったり。子供たちの無限の想像力を愛でる至福の時間。それは童心に帰ることが出来る夕暮れ。黄金の一刻を味わえる作品でした。

だから、是非とも。
前作を鑑賞していなければ前作から。
前作を鑑賞したならば本作も。
やかまし村の日常を覗いてみてください。
こたつむり

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