ワンコ

ミステリー・トレインのワンコのレビュー・感想・評価

ミステリー・トレイン(1989年製作の映画)
5.0
【旅④/トレイン・トレイン】

ジム・ジャームッシュのデビュー作から6番めまでの作品は、全て旅がモチーフだと思う。
出会い/集い、良し悪しではなく、その成り行きを見つめているのだ。
そして、出会い/集い、旅するのは、僕達のことではないのか。
(※ これら6作品のレビューは書き出しが同じです。すみません。)

この映画を、当時、初めて観た後、「工藤夕貴、すっげぇーかわいい‼️」と、その時付き合っていた彼女に言ったら、「チッ‼️」と舌打ちをされて、ドキッとしたのを思い出す。

この映画「ミステリー・トレイン」では、作中でラジオごしに聴こえてくるエルヴィス・プレスリーの「ブルー・ムーン」と、映画タイトルで、エンディング曲でもある同じく「ミステリー・トレイン」に、ジム・ジャームッシュならではのメッセージが隠されていると思う。

「ブルー・ムーン」は、(おそらく別れて)独りぼっちの女性が、月に向かって、自分が見えますか?そして、良い人が現れますようにと祈る歌詞だ。

そして、「ミステリー・トレイン」は、一度去ってしまった彼女が、16両編成の列車で戻ってくる嬉しさを歌っている。
ただ、この曲は、エルヴィスっぽいロックンロールじゃなくて、それこそ列車のガッタンゴットンというリズムを歌にしたような曲なのだ。

ジム・ジャームッシュは、この映画の中で、皆んなは、決して独りじゃない、きっと何かが、巡り巡って、やってくるよ!と言っているのだ。

この映画「ミステリー・トレイン」は楽しい。

メンフィスの安宿で展開する3つのオムニバス・ストーリーの主人公たちも、ちょっと変な他の登場人物も、ホテルのフロントの2人も、むちゃくちゃ個性的だ。

日本では、すっげーかわいい工藤夕貴と、永瀬正敏のキャスティングで有名だけれども、実は、日本人には少し”あるある”のようなストーリーも楽しい。

彼女と行った海外の旅行先での意見の相違とか、洋服そんなに要らないとか、ホテルの海外のふわふわのバスタオルが欲しくなるとか、疲れてるくせになぜかセックスしちゃうとか。

それだけじゃなく、このオムニバスを繋ぐ、エルヴィスの肖像画、喘ぎ声、深夜2時17分のラジオ、銃声、そして、ルイーザの前に現れたエルヴィスの幽霊、別れたディディとジョニーのニアミス。
あと、ジョニーのすっげー長い小便。
とにかく楽しい。

ジム・ジャームッシュは、こうして、メンフィスの小さな安宿ひとつとってもいろんな物語が詰まっていて、それは繋がったり、巡って、また繋がったりすると言いたいのだと思う。

決して独りぼっちじゃない。
だから、僕達の世界は楽しいのだと伝えたいのだ。

愛おしくなる作品。
ワンコ

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