回想シーンでご飯3杯いける

ミステリー・トレインの回想シーンでご飯3杯いけるのレビュー・感想・評価

ミステリー・トレイン(1989年製作の映画)
4.0
Netflixで配信が始まったジム・ジャームッシュの初期監督作品。これはその4作目。リズム&ブルースのクラシックスが多数録音された町として知られるメンフィスを舞台にした短編連作になっている。

一律料金で安く部屋を提供するホテルを舞台に、自由に生きる若者達の姿を描いている。現代の目線で見ると分かり難いかもしれないが、他人から見れば特に羨ましくもない個人の自由や夢を、こうして映画としてまとめる事。「ストレンジャー・ザン・パラダイス」のレビューで書いた通り、ジャームッシュの映画はその点で、当時のメインストリームで持てはやされていた華やかな映画には無い圧倒的な個性を有していた。

ジャームッシュ作品特有のミュージシャンを俳優として起用する手法が、今作では特に顕著で。「ストレンジャー・ザン~」の挿入曲を歌っていたブルース・シンガー、スクリーミン・ジェイ・ホーキンス、ザ・クラッシュのジョー・ストラマーによるお宝映像レベルの演技が見られるし、3つの短編を結ぶ鍵となるのがトム・ウェイツ扮するラジオのDJっていうのが何とも渋い。

出てくる人、出てくる人が、みな個性の塊。特に声高にアピールするでもなく、当たり前のようにアジア人や黒人が同じホテルで泊まっている光景に、当時のジャームッシュ作品が持っていた引力を改めて思い知る。