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ミステリー・トレインのKANAのレビュー・感想・評価

ミステリー・トレイン(1989年製作の映画)
3.7

ジャームッシュ初期代表作3作目。

メンフィスの片隅にある古びた安ホテルの3つの部屋のストーリーを並べた三部構成オムニバス。

日本人としては第一編の永瀬正敏と工藤夕貴の主演が嬉しい。
荒削りだけど初々しい二人がロカビリーを愛するカップルをキュートに演じてた。
永瀬さんのポーカーフェイス、夕貴さんのちょっとあどけない感じ。
愛想のない無言の長回し、たわいもない気まぐれな会話、粘性のないセックス…
二人の融合具合が熱くなり過ぎず、ジャームッシュテイストによく馴染んでて。
あの口紅ベットリの二人の画、アートしてて好きだなぁ。
ウォーホルに描いてほしかった!

イタリア人女性が出くわす一連の出来事は漫画みたい。
中途半端に出てきたエルヴィスの幽霊は何事!?笑
男性3人のグダグダぶりは『ダウン・バイ・ロー』に通ずるものがあって微笑ましい。
ブシェミとジョー・ストラマーの情けないキャラがじわじわくる。
フロント係の2人のやりとりも毎回シュールに笑える。
…いずれも悲壮感も危機感もなければ多幸感溢れるわけでもない。

そんな中、皆が共通して目にするうらぶれた路地の向こうを列車が走る夜景がなんとも言えない郷愁を誘って印象的だった。
これといって華のない街なのに…
だからこそ、かな。

3組のストーリーが同じ日の出来事だったと段々わかってくると、作品が深みを増す。
その交差や同時刻にそれぞれどんな事をしてたか…

といってメッセージなんてないのだろうけど、社会的にはスポットライトなんて当たりっこないちっぽけな群像劇を上から眺める感じにウディ・アレンのような趣も感じた。
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