トルーパーcom

マイティ・ソーのトルーパーcomのレビュー・感想・評価

マイティ・ソー(2011年製作の映画)
3.0
アスガルドの神兄弟を描いたマイティソーの第一作。
エンドゲーム公開直前 MCU総復習その04。

異世界パートの圧倒的なスケール感ある映像と、地球パートでのギャップコメディが魅力。
監督を務めたケネス・ブラナーは、ハムレットなどシェイクスピア演劇出身なのでまさに適役な人選といえる。

【1】アスガルドの神兄弟
◼️ソー
無敵のハンマー『ムジョルニア』を振り回す雷の神。
製作当時まだ映画出演経験も少なくまったくの無名だったクリス・ヘムズワースをキャスティングしたMARVELの慧眼たるや。190cm超えの身長と筋骨隆々の肉体美、魅惑的な低い声を持つ彼が、まだ若く未熟な神ソーの役柄にぴったりとはまった。

MCUのソーはアメコミ原作のソーおなじみの兜は基本的にかぶっていないが、本作の初登場シーンではコミックそのままの姿で現れるのが今見ると新鮮。

◼️ロキ
ソーと共に本シリーズの主役というべき『悪戯の神』ロキ。
トム・ヒドルストン演じる彼の魅力なくしてマイティソーシリーズの成功なし。こんなにも迷惑でこんなにも愛される悪役が未だかつていただろうか(いやいない)。
MCU作品を通して見た後で原点の本作を見ると、このロキというキャラクターに一層の愛着がわくこと間違いなし。

常に孤独の中で自分の居場所と存在意義を求めているロキ。彼の気持ちが痛いほどわかるからこそ観客は彼に感情移入でき、
それと同時に彼の行動の突き抜けっぷりにまったくついていけないからこそ観客は「そうだ彼は神なんだった。我々人間には理解できない次元で生きているのだ」と感じ、この荒唐無稽な世界観を違和感なく受け入れられるのだ。


【2】神の国アスガルド
演者がいかに魅力的に役を演じても、それだけで彼らが神であるという世界観を成立させるのは困難。しかし本作では圧倒的なCG映像によって問答無用でこの世界観を確立している。2011年の公開から8年経った今見ても素晴らしい映像。

シリーズ3作毎回だが、アスガルドの全景が映るショットはえもいわれぬ高揚感が得られる。ディズニーランドへ来園してシンデレラ城の前に立った時と似たような感覚。

虹の橋を馬で駆けるシーンのスケール感最高だし、ヘイムダルが機械を動かしてソーたちが他の世界へ飛んでいく映像は圧倒的。
エンドロール冒頭の映像が特に素晴らしくて惚れ惚れする。

個人的な話なのですが、最近自宅にプロジェクターを導入した自分にとって、アスガルドの映像が観られるというそれだけでマイティソーシリーズの評価は一段上がってしまいます。


【3】ギャップコメディ
本人は大真面目なのに、文化の違う世界へ入り込んだことで発生するシチュエーションギャップのコメディ要素も本作の魅力です。阿部寛主演のテルマエロマエ的な。
いや、ソー映画の本質はむしろこっちなのかもしれないです。

ヘムズワース演じるソーは、地球の文化となじまないためハチャメチャな行動ばかりとるのですが、単純に粗暴というわけではなく、どこか気品を感じさせるような仕草や態度を見せるので憎めない。ここは素晴らしい演技だなと思う。

個人的に好きなシーンは、ソーが朝食の準備を手伝うシーン。肩に無造作にかけたタオルが、高級レストランのウェイターが使うトーションのように見えてしまうような彼の気品ただよう立ち振る舞いにハッとする。


<以下、ネタバレあり感想>





【4】ヒーロー誕生
「主人公はなぜヒーローなのか」というヒーロー映画普遍のテーマ。
彼らはスーパーパワー故にヒーローとなるのではなく、英雄的意志/行動によってヒーローとなる。ふとしたきっかけで身につけた超人的能力に戸惑いつつも、それを正義のために用いる使命に目覚めていくというのが定番。アイアンマンもスパイダーマンも、彼らの能力の成長と共にヒーローとして成熟していく。

でもソーは違います。ソーは最初っからめちゃくちゃ強いのです。だって神だから。

しかし、強いだけでは立派な王とはなれない。血気盛んで後先を考えず行動するソー。そんなソーに、父オーディンは彼の神としての能力を奪い、地球に追放するという試練を与えます。

力を失いただの男となったソー(といってもプロレスラー以上に強いんだけど)。
彼が自身の愚かさを認め、デストロイヤーから皆を守るため、自己犠牲の行動を見せた瞬間、ムジョルニアが彼を認め、ソーは真の王/ヒーローとなる。

傲慢な若き王が、内面的成長を見せ、ヒーローとして帰還。スクリーンいっぱいに映し出されるジェーンやシフらの満面の笑みにつられて観客の顔にも自然と笑顔が浮かぶ幸せな瞬間。
このシーンはMCUのフェーズ1屈指の名シーンと思います。最高。


【4】その他キャラクター
・ジェーン
ナタリーポートマン演じるジェーンがあまりにも美人すぎる。
ソー復活のシーンのみならず、彼女の顔がスクリーンにアップで映るカット多めで眼福。

・ダーシー
ジェーンの貴重な研究資料が押収される中、iPodが持っていかれたことにこだわるダーシー可愛い。

・オーディン
アンソニーホプキンス流石の貫禄。ヨトゥンヘイムに降臨する彼の神々しさに震える。

・ヘイムダル
パシフィック・リムも良かったし、イドリス・エルバは存在感あるいい俳優だと思う。
北欧神話の神を黒人の彼が演じることに多少の雑音はあったようだけどキャラが立っていて素晴らしいと思う。凍りつくシーンがなんか最高にカッコよかった。

・ウォーリアーズスリー&シフ
それぞれキャラが立ってるしソーとの関係性も魅力的。強い信頼関係が感じられてよい。
浅野忠信はなんか笑っちゃったけど。

・デストロイヤー
ビジュアル最高。顔がガパッって開いてビーム出しちゃうの最高にクール

・子役
ソーとロキの幼少期を演じた子役が2人とも面影ありすぎで素晴らしかった。よくあんなに似てる子役連れてきたなって感じ。

・氷の世界で出てくる獣
ビジュアルがほぼスターウォーズEP6に出てくるランコアのパクリだったような気がする。色以外に巨人の国要素がなくてちょっと萎えるキャラだった。


【減点ポイント】
・セット
地球パートのメキシコシティの街のセットがちょっとチープだったんじゃないかと思う。
セットよりロケでなんとかならなかったのかなと思うけど、vsデストロイヤーのアクションで破壊しなきゃいけないから難しかったのかな。
オープニングの嵐を観測するシーンは広大な感じですごく良かっただけに、後半失速したような印象になってしまった。


・地球のメンバー
ジェーンら3人組の描写がちょっと雑だったような気がする。彼らがどんな人物なのかよくわからない。
彼女が大学の教室で講義してるシーン or 学会で発表とかしてるシーンあたりはさめばよかったのにと思う。ちゃんと実際の大学の教室でロケやって。
総じて、アスガルドのスケール感に対して、地球パートが弱かった印象。スケールが小さいのと雑なのは違うと思う。


・ナタリーポートマン
ナタリーポートマンというビジュアル最高の女優を起用しながら彼女の魅力をイマイチ引き出せてなかった気がする。特に衣装。スターウォーズのパドメの印象が強すぎるのかもしれないけど、彼女のファッションを楽しみにしていた観客は多かったはず。
学者の役だから露出少なめの格好でいいとは思うけど、なんか垢抜けないダサめな印象だった。ブーツの安っぽい感じとか好きじゃない。シンプルにジーンズに白Tとかで知的スマートな感じでよかったのに。

・コールソン
本作のコールソンとSHIELDはちょっと感じ悪い組織として描写されていたという印象。
けっこう残念ポイントだった。顔見せ程度のバートンはよかった。


【スコア】
★3.0ですかね。主人公2人とアスガルドの描写は素晴らしいけれど、メインとなる地球パートが若干残念な感じ。


<以下、MCU全作観賞済みの方向けネタバレあり感想>





【5】MCU他作品ネタ
・シットウェル
後作のウィンターソルジャーで別の一面を見せる彼が初登場。
たいした役割はないが、普通に働いている姿に恐ろしさを感じる。

・オーディン
3作目のラグナロクでヘラによって語られたオーディンの人物像をふまえて本作を見ると、巨人たちとの戦いや、赤子のロキを拾ったエピソードなどもちょっと違う印象で見えてしまう。

・アスガルドの武器庫
インフィニティガントレットやアガモットの眼など後のMCU作品で意味を持つアイテムがいくつかチラッと映るので「おおーっ」ってなる。

・知り合いのガンマ線研究者
セルヴィグ博士がつぶやいたコレはハルクことバナー博士のことだよね。

・エンドクレジットのおまけ映像
セルヴィグ博士はロキの手にかかっていることを示す映像が。アベンジャーズのオープニングにつながるシーンなので熱い

・ソーとガラス
ジェーンらの車のフロントガラスに激突するソー、病院の窓ガラスに押し付けられるソー。
インフィニティウォーの「ワイパー!ワイパー!」が記憶に新しいがソーは毎回ガラスにぶつかったりへばりつくシーンがあって定番ギャグで笑える。
トルーパーcom

トルーパーcom