YasujiOshiba

復活のYasujiOshibaのレビュー・感想・評価

復活(2001年製作の映画)
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備忘のために:

レンタル落ちDVDで鑑賞。もともとは RAI のテレビ用に製作されたもの。

トルストイはタヴィアーニ兄弟の愛読書のひとつ。「書かれたページから生きた人生への移行があまりにスムーズ」だと絶賛しているのだけれど、同時に、兄弟にとって映画と文学は異なるものだ。

だから彼らは本を映画に翻訳しようとはしない。トルストイの『復活』を選んだのは、そこに映画で表現したいと情動を見出したからにちがいないが、しかしふたりの映画はいつもオリジナルテキストを裏切ることになる。ひとつには、文学と違って映画には、映像と音のメカニズムが働いていることがある。

けれどもそれだけではない。タヴィアーニ兄弟には、トルストイの「神のわざと人のわざ」を原作にした『San Michele aveva un gatto (聖ミケーレの雄鶏さん)』があるが、そこで兄弟は「神のわざ」の場所に「政治のわざ」を置いたと言わている。じっさい、宗教的な啓示を受ける要素は削られている。

この復活ではラストシーンがそうだ。「復活」とは、主人公が神の啓示をさずかることなのだけれど、タヴィアーニはそこにあったはずの聖書ではなく、ロシアの民衆の年越しの祝宴に置き換えているのだ。「復活」はなにも聖書に触れる必要はない。

貧しく純朴な人々がそれでも陽気に杯をあげて願をかける姿に接することでもまた、それは可能なのだというわけだ。そういう意味でトルストイは作品は、宗教的なプロパガンダなどではもとよりなく、ぼくらが生きている世界の秘密に接近するための手段にほかならないということのなのだろう。
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