つかれぐま

コーヒー&シガレッツのつかれぐまのレビュー・感想・評価

コーヒー&シガレッツ(2003年製作の映画)
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実はコーヒーが美味しく見えないので、そこには期待しないこと。どれも煮詰まっていそうで、登場する大の大人が皆、砂糖をガバガバ入れているのが、そうしなきゃ飲めない代物である証左。だがジャームッシュという作家のコク、キレ、酸味?は味わえる。

コーヒーが不味そうなだけじゃなく、今時タバコが吸えるカフェというのは、あれだな。スターバックス的無機質な合理性への否定というか抵抗。そこからしてもう(現代の価値観では)無駄なことを愛するジャームッシュの作家性が垣間見える。

バシッと決まった構図の中で、繰り広げられるのは噛み合わず、間の悪いジャンクな会話たち。この緻密と散漫のアンバランスが面白く、むしろそれが生きることの本質であるかのようにすら見えてくる。その間を埋める役割のコーヒーとタバコに、味の良し悪しは関係ないかもしれない。

ジャームッシュの作品は、どれも大したことが起こりそうで起こらない。逆にその「起こらない」ことを描き愛でるという意味では、本作はその極北。なので(自分は好きだが)ジャームッシュ入門としては薦めない。