〈コーヒーのように薄まっていく「ジム・ジャームッシュのオムニバス映画 その3」〉
『ミステリー・トレイン』『ナイト・オン・ザ・プラネット』、そして『コーヒー&シガレッツ』。これらジャームッシュのオムニバス映画は、メンフィスの安ホテルにタクシー、カフェと、いずれも彼らしい質素で煤けた舞台が共通項となっている。
また、この3作品を順を追って観ていくと、より章の数は増え、ひとつひとつのドラマ性は薄まっていくことに気づく。すなわち、小さな物語が集積し、断片的なコラージュを生み出す趣へとシフトしていく。
ゆえに賛否も分かれる。肯定派は本作のあの軽妙さがよいのだと口を揃える。しかし軽いと云っても、実のところ本作はけっこうな集中力を要する作品だ。というのも、話が切り替わるごとにキャラの性格や設定を新しく掴んでいかなければならないからであり、しかも全編がカフェで描かれるため視覚的な情報が薄い。そのため、セリフだけが彼らを読み解く手がかりとなっている。
これが私にはしんどかった。ひとつの章が終わるたびに次こそはと頭を切り替えられるのが救いにはなったのだが、結局毎回入り込めない。ケイト・ブランシェットが一人二役を務める「いとこどうし」はよかった。