クシーくん

決断の3時10分のクシーくんのネタバレレビュー・内容・結末

決断の3時10分(1957年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

モノクロの味。話も絵も渋い。

不毛の地に生きる貧しい牧場主ダン(ヴァン・へフリン)が報酬を頼りに駅馬車強盗の親分ウェイド(グレン・フォード)を護送する、非常にシンプルなストーリー。

ダンとウェイドは正対照な人物だ。貧しい土地で家族を養い生き延びようと懸命なダンは、生活苦のために常に疲労の滲む重い表情を湛えている、土臭い生真面目な男だ。
対するウェイドは生きているのは暇つぶしとでもばかりに、世の中を舐め切った薄ら笑いを浮かべる「余裕の人」で、部下を連れて当て所のない根なし草。自分が捕まる危険も省みずに酒場の女をナンパする無法者。

こんな二人だが、その価値観がぶつかり合うような話ではない。考え方が違い過ぎて到底噛み合わないのだ。徹底的に対極的に描かれた二人だからこそある種の奇妙な敬意が生まれる展開も受け入れられる。
ダンも酔っ払いのアレックスも皆一生懸命生きてる。どちらかと言えばウェイド的悪漢の方がキャラクターとしては好みなのだが、本作はヴァン・へフリンの朴訥な魅力に軍配を挙げたい。
しかし何と言ってもグレン・フォードの目力。目でここまで魅せる演技は久々に見た。

サルーンを飛び出してからの緊張感。凡人(と言っても、機転が効き腕の立つ男ではあるが)のダンならではのうまい回避が楽しい。
ラストシーンの雨の多幸感、清涼感が凄い。「雨に唄えば」や「ショーシャンクの空に」で観られる幸せな雨ってやっぱり良い。グレン・フォードの一種サイコパス的なキャラクターや今までの悪行を考えるとやや唐突で御都合主義的幕切れ感は否めないものの、あんたに救われたと嘯く台詞の小気味良さに全てを許せる感じ。
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