アキラナウェイ

秒速5センチメートルのアキラナウェイのレビュー・感想・評価

秒速5センチメートル(2007年製作の映画)
2.5
「すずめの戸締まり」が思いの外良かったので、新海誠監督作品の過去作を。

秒速5センチメートル。
桜の花びらが舞い落ちる速度から採られたタイトル。惹かれ合う男女の時間と距離による変化を短編3話の連作構成で描く。新海誠が監督・原作・脚本・絵コンテ、および演出までを手掛けている。

「桜花抄」「コスモナウト」「秒速5センチメートル」の3話構成で描かれるのは、小学生で出会った遠野貴樹と篠原明里という2人の男女が大人になるまでの物語。

本作がお好きな方は気分を害される可能性があるので、最初にお詫びしておきます。

ごめんなさい。

舞い散る桜の花びらも、
降り積もる雪も、
ひぐらしが鳴く夏の景色も、
様々な表情を見せる空も、雲も、
何もかもが綺麗なのに。

人物描写だけが、びっくりする程に拙ない。お粗末とすら言えるキャラクターデザインが観ていて恥ずかしくなってくる。

「すずめの戸締まり」の"常世"へ継承されたであろう虹色に光り輝く眩い空とか、新海誠監督お得意の駅や電車のリアルな描写とか。緻密な絵のタッチと如何にも"アニメ"チックなキャラデザが合わず、景色と人物とのバランスが悪い。

ポエムの様に、心情を全て語り尽くそうとする脚本も個人的に好みじゃない。

結局、運命的に惹かれ合った少年少女が、高校生になって、でも何も行動を起こさなくて、大人になって、彼女は別の男と結婚しましたというだけなら…。

大してドラマティックでも何でもない。

なのに。

山崎まさよしの「One more time, One more chance」が全部持って行ってしまうラスト。"こんなとこにいる筈もない"君を想って景色を眺めてしまう主人公。

なるほど。
若かりし新海誠監督が拗らせているという感想しか思い浮かんでこない。若い頃に鑑賞すれば、感じ方はもっと違ったかも。

記録的な大雪の日の真夜中に、駅の待合室でお弁当を広げる中学生男女を見ても、咎めもしない駅員はどうかしている。親達は心配で仕方なかっただろう。

ああ、そうか。
「天気の子」でも感じたけど、大人の目線が排除された、子供達の自分勝手とも取れる色恋沙汰が好きになれないんだ。

これ以上新海誠監督の過去作を追っても、個人的に合わなさそうなので、ここまでにしておこう。