ウサミ

秒速5センチメートルのウサミのレビュー・感想・評価

秒速5センチメートル(2007年製作の映画)
3.3
惹かれ合う心、それを引き裂く、物理的距離。

物理的距離を超えた先に襲い掛かるのは、心の距離。

そして、それを超えた先に待つのは…


人と人、心と心の距離を美しく繊細に描いた、新海誠のマスターピースとも名高い本作。

あまりにも切なく、奥ゆかしい愛の形を、独特なセンスと世界観、そして美しいアニメーションと音楽によって、3部構成によって描いている。


各話ごとに時間軸、舞台を変え、「好き」という感情によって心を通い合わせようとする男女を、「距離」という壁が阻もうとするという様を描いた、何とも切なく心が締め付けられる映画だった。


時間だけが過ぎていくという焦燥感、孤独感、喪失感。
物理的に側にいながら、強く感じられる心の距離。
手に入るはずのないものに闇雲に手を伸ばそうとする者、失ったものを心に仕舞いそれを乗り越える者。

3つのストーリーによって紡ぎ出される愛の形は、あまりにも切ないものだった。

幼くて、あんなこともあったねと捨てられる無垢な愛。
その永遠を信じようとする愚かな心。

映画の繊細で奥深いメッセージ性やテーマは見事だが、それの見せ方が、個人的にかなり苦手だった。

モノローグによって説明されることが非常に多く、観ながらに感じる感動を、観客サイドに委ねてくれない感じがした。
常に、新海誠の言葉を押し付けられている感覚がして、それがすごく窮屈だった。
言葉自体もちょっと臭いというか、聞いてて苦痛に感じることもしばしば。
60分がすごく長く感じた映画だった。

アニメーションは美しく目を引くものであったけれど、それによって感動やノスタルジーを生み出したり、人物の心を描いたり、思い出しただけで心が動かされてしまうようなインパクトがあったり、という訳ではなかったのが残念。個人的には、美しい絵の数々をただ見せられていただけのように思えてしまった。

「言の葉」でも感じたけれど、アニメーションに音楽を合わせるというより、音楽にアニメーションを合わせている感じがして、そこにアニメーション映画としての感動は無かった。まるで音楽のPVみたいだった。
音楽に合わせたアニメではなく、アニメによりそう音楽であって欲しい!

キャラクターも、主観的に見れば感情移入が出来ず、俯瞰的に見れば興味が湧かない、好きになれないキャラクターばかりだった。

好きだった点は、第2話の紙パックのコーヒーとヒグラシの声。このカットがすごく心に残った。

物理的に離れ、時間が経ち、色々な出会いの中で、人は様々に愛というものを変容させて、手探りの中でその答えを模索していく。
13歳という幼い時点で見出した愛の形を、それを真実と願い、ただ直向きに信じ続ける姿は、滑稽でリアリティが無いように思えると同時に、それを信じ続けることの尊さや美しさ、奥ゆかしさを感じる。
だからこそ、そこにドラマを見出し、感動を生み出すことが出来るのだと思う。


賛否が分かれそうな本作、しかしそれこそがこの監督の魅力なのかも。と思えた。