サンヨンイチ

秒速5センチメートルのサンヨンイチのレビュー・感想・評価

秒速5センチメートル(2007年製作の映画)
3.5
新海誠監督作品の鑑賞4作目。

青春の、
青春にしかできない
刹那的な感情の高ぶり。

なんであんなに好きだったのか
今となってはわからないけれど
でも好きだったことは明白な、あの感情を思い起こさせます。
青春のノスタルジーを全身に浴びたい時に是非。

主人公の心の移ろいが哀しい。

第一話は湿っぽく、いかにもアニメといったエンディングを迎えるものの、
現実はそううまくはいかず。
第二話では主人公とヒロインの結びつきが少しずつ、
実感できないほどゆっくりとした速度でほどかれていく様を、
画面とストーリー上では殆ど確認できないのに
確実に実感させられてしまう。
最終話、そしてそこまで落ちるか、と落胆させられるけれど、
ここが一番現実に近しいエンドになっているリアルさ。
大人になっていくにつれ、過去の出来事がファンタジーの世界のように
現実味を失っていく様は、
現実に疲弊した人が過去を羨む『今』と重なる。

これはティーンに分かるまい。
十代にこそ、この映画を観て刹那の青春を謳歌し大事にしてほしいと願うが、
そんなこと分かるまい。
それが悲しいなあ。
大人になって、実際に疲弊してから実感できるなんて。

One more time, one more chance がよすぎて、何度もリピートしてしまいます。
なんとなく探してしまう気持ちがわかってしまう。
もし見つけたら、もし出会えたら、じゃあ何をする訳でもないのに。

過剰とも言えるほどリンクしたPV調になっているのも特徴的で、
音楽と映像と物語の調和を大事にしていることがとても伝わる。
そういう映画のジャンルがあっても良いじゃないかと、新たな映画の顔を見せてくれたのが新海誠作品でした。