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秒速5センチメートルのkoyamaxのレビュー・感想・評価

秒速5センチメートル(2007年製作の映画)
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タイトルは桜の花びらが舞い落ちる速度のことだそうです。

アニメの撮影(特に桜吹雪)を観たかったことが鑑賞のきっかけです。

人生の3つの季節の中を生きる男と女を描く3編のオムニバスです。
主人公が同じで、そのうち1編は女側から見た主人公を描いています。
それぞれ時期と場所、視点が微妙に違うという構成がユニークです。

オムニバスじゃなくても成立するのだと思いますが、章立てすることによって、瑞々しさ、まぶしさを経ての翳りなど、時の移ろいというものをはっきり意識して観ることになりました。

動きで観せるアニメーションらしいアニメーションがなく、ひたすら情景描写を積み重ねていますが、朝の光や自然現象を丁寧に描くだけでもドラマは存在しうるとおもいました。
そしてその情景と主人公たちの心理描写が一体化しています。
これは映画では特別なことではないと思いますが、高い画力と撮影技術で表現している空気感自体に気持ち良さがあります。



この方は脚本での展開ではなく、まず情景ありきで付加価値として物語をつけていくという印象があります。(印象です)
そして、それを踏まえた詩的な表現こそが監督独自のものになっているんだとおもいます。


一方で唄が存在する音楽ありきで展開するところもあり、曲先行感がどうしてもある。そうなるとやはりPVぽく感じてしまいます。

山崎まさよしの「One more time, One more chance」が主題歌なんですが、これはそもそもみんなが映像を喚起できるドラマチックな曲なので、正直どんなにすばらしい画があっても蛇足感が凄くあるのですが、この音楽に深い感銘をうけて作っているんだという率直な感じもうけました笑


後に作られた「天気の子」「君の名は。」は外部(エンタメ)を意識した次のフェイズとして作られていると思いますけども、無理してはしゃいでいる感やいままで培ってきた自分をあえて否定する感もあり、若干こちらも恥ずかしくなったのですが、、

そもそも新海監督の本懐は本作のほうにあるのだとおもいました。

ひたすら一人静かなモノローグな主人公でも、こっちの路線でそれはそれでいいんじゃないかとおもいましたけどね。


桜吹雪と心模様。それを彩るかのような柔らかに差し込む光がよかったです。

逆光があるだけで、青春の感じあります。
青春とはフレア多めな逆光だとおもいました笑
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