HicK

ラスト サムライのHicKのレビュー・感想・評価

ラスト サムライ(2003年製作の映画)
4.2
《逆輸入の美》

【逆輸入】
「間」の演出の多用、最小限のセリフ、表情で語る心情。それらの表現自体は和製では無いとは思うが、そんな演出や演技から逆輸入版の和製美を感じる。外国人が作るからこそ美しさが伝わりやすいものになっているのかもしれない。ちょっとした目線だったり仕草だったり、全てがセリフ。画面に引き込まれる。

【美の演出】
画質は柔らかいタッチで、俳優の表情や情景がさらに美しく映し出されている。ライティングの当たり方なのか、全体的にしっとりとした印象。よりフォトジェニックさが際立つ演出は、やっぱり日本の美をどこか神格化している海外ならではなのかも。音楽のハンス・ジマーもいい。今作は映画に合わせスローペースの楽曲を多用していたが、この人の作る音楽の幅に驚かされる。

【1番の魅力:俳優陣】
俳優陣は文句なしに素晴らしかった。トム・クルーズ、渡辺謙、真田広之、小雪はもちろん素晴らしい。それ以外で良かったのは当時子役だった松池壮亮。不信感を抱いてる顔から愛くるしい笑顔、そして涙を流すシーンまでとても自然で演技っぽさが無い。彼の表情の全てが頭に焼きつく。関係ないが、彼のおでこの可愛さは国宝級。通訳/写真家役のティモシー・スポールもとてもいい味を出していた。今で言う日本オタクやウィーボのような憎めない可愛らしさがある。日本語はかなりたどたどしいが、場面に合わせた抑揚や感情の入れ方はさすが。

【ただ一点だけ】
侍の村が綺麗すぎるのがちょっと残念。あのニュージーランドの芝生のように綺麗に刈りそろえられてはいないだろう。どこかのいい家の庭みたい。もっと雑草とか、自然な雰囲気での美が欲しかったかな。ちょっとロケ感が出てしまっていた。でもそれも含めて海外が思う日本の美として、ファンタジー感もあったり。

【総括】
侍の最後がインディアン制圧と同様の出来事だった事やシントイズムなど日本にいると麻痺してわからなくなってしまうが、こうして第三者目線で語ってくれることで気づかされる事も多かった。なにより、日本人では作れない現実逃避感のある美しさの表現は魅力的。最後、勝又の死について「どう死んだかでは無く、どう生きたかを教える」と答えるシーンは素晴らしいセリフだった。
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