垂直落下式サミング

キャピタリズム マネーは踊るの垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

4.0
リベラルテロリストのマイケル・ムーア監督がおくるサブプライムローン問題の真相に迫ったドキュメント。
映画作家マイケル・ムーアの特色は、今まで知らなかった驚きを提示して、それを分かり易く分析解説してくれるところにあると思う。日本で言うと池上彰だ。だが、今回は問題が問題なだけにはなしが複雑に入り組んでいて、一概に「ここが悪い!」「コイツが悪い!」とはハッキリとしたことを明言しようがないため、ドキュメンタリーの焦点としてはややピンボケしている。
ただ、庶民、投資家、起業家、政治家、さまざまな人物を取材することによって、アメリカの経済は致命的な機能不全をきたしていることが露に。
漠然と資本主義と自由主義は不可分という勘違いが蔓延しているが、必ずしもそうではないはずだ。自由を第一とするなら資本主義を採用するべきだし、その上での自由経済活動こそ最も合理的な仕組みであり、誰にでもチャンスがある。ただ、誰もが成功するとは限らないだけ。それ故に、国の経済のために大手投資銀行は税金で救済されるべきだが、不景気に困窮した低所得者が家を追い出されるのは致し方無し。いい仕事に就けなかった自己責任、身の丈にあわない生活をした自己責任、返せない金を借りた自己責任、こんな理屈がまかり通ることに憤りを覚える。
コンビニのアルバイトより薄給で働く飛行機のパイロット、大学卒業と同時に学資ローンの返済におわれて銀行に首根っこをつかまれた状態の学生たち、過労気味の社員に生命保険を掛けて死をも社の利益に変えてしまう経営者など、出るわ出るわ資本主義の暗黒を大放出。
世の中が経済のためにだけに成り立ってしまったら、とんでもないことになってしまう。効率性・生産性という便利な言葉で人の価値を値踏みする、なんと悪辣なことか。こんなにバカにされているのに、なぜ皆で立ち上がらないのかと、ムーアは訴える。我々は奴隷ではない市民なのだから、抗議活動も打ち壊しも革命でさえ、当然の生存権として認められるべきものだ。