南宮龍八

宿命の南宮龍八のレビュー・感想・評価

宿命(2008年製作の映画)
3.0
裏社会の人間たちが破滅に向かって突き進む定番のコリアン・ノワールである。のっけから主役の男たち(ソン・スンホン、クォン・サンウ、キム・イングォン、アン・ネサン)がカジノで大乱闘を演じる。殴りこみのアイテムとして必ず金属バットが大活躍する韓国ヤクザ映画ならではのお約束の光景だ。ソン・スンホンが現金強奪の罪をひとりで被って投獄され、その間にクォン・サンウが組織のナンバー2にのし上がるくだりはまんま香港映画「男たちの挽歌」(1986)である。刑期を終えて出所したソン・スンホンを待っていたのはヤク中のキム・イングォン、金に狂ったアン・ネサン、そして裏切り者のクォン・サンウだった。ソン・スンホンとクォン・サンウの対立を軸として彼らを取り巻く人間たちの悲劇が描かれていく。特にキム・イングォンのクスリに溺れた救い様のないエピソードは強烈である。出所したソン・スンホンがクォン・サンウの手下たちに不意打ちされる繁華街のアクション・シーンなど、ソン・スンホンは除隊後の映画初出演としてかなり気合を入れて頑張っている感じである。あまりお目にかかった事のないワイルドな風貌と捨て身のアクション演技は評価したいと思う。意外だったのはクォン・サンウが根っからのワルではなく妹思いの優しい一面を見せたり、虚勢を張っているだけの小心者にしか見えなかったこと。クォン・サンウがどんな凶悪なキャラクターを演じるのかと期待した点では肩透かしを食らったのだが。期待すると言えばソン・スンホンとクォン・サンウの確執をもっと掘り下げて見せてくれるのかと思ったら唐突に訪れるあの結末には唖然とした。内容的には「宿命」と言うほどカッコ良くはなく、ゴミ扱いされた人間たちが道端にボロ雑巾のように捨てられてしまう哀れな「末路」といった印象である。因みに、僕が鑑賞したのは日本人アーティストの曲が一切OSTとして使用されていない韓国公開版である。

08/10/18
南宮龍八

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