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どですかでんの一のレビュー・感想・評価

どですかでん(1970年製作の映画)
3.5
黒澤明監督作品

戦後のスラム街のような街で起こる様々な人間模様を、ユーモラスかつ幻想的に描いた作品

社会の底辺で生きる人々の何気ない日常を切り取った群像劇
確かにユーモラスに描かれてはいるのですが、非常に重たい作品でした

黒澤監督最初のカラー作品ということだけあって、色味をこれでもかと感じさせるような構図が多く、モノクロとはまた違った美しい表現がいくつもある

スラムのような不衛生極まりない貧困街で暮らす個性豊かな住人達の優しくも温かい生活、そして厳しい現実
そんな多種多様な背景のある人々ですが、本作で描かれるのはどこにでもある普遍的な社会の縮図

電車の擬音を「ガタンゴトン」 ではなく、「どですかでん」と表現する電車バカの主人公六ちゃん
タイトルしか知らないと全く想像もつきませんが、まさかここからとっていたとは

そもそも主人公と言えるのかもわからないですが、ポスターにも映る六ちゃんはほとんど出てこないし、出てきても基本的には電車ごっこで「どですかでん、どですかでん、どですかでん」と言ってるだけ
これがまさか『赤ひげ』の長坊を演じた頭師佳孝さんというから、子どもの成長は恐ろしく早いと痛感させられた

ごちゃごちゃ書きましたが、喜怒哀楽それぞれのシーンがエネルギッシュに映し出され、それでも生きていこうと前向きになれる力強いメッセージのある作品だと思います

ただ、本作後に監督は自殺未遂事件を起こしているので、どうもリンクしているような点が多い気がしてならないですが…

〈 Rotten Tomatoes 🍅73% 🍿78% 〉
〈 IMDb 7.4 / Metascore - / Letterboxd 3.6 〉

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