メル

存在の耐えられない軽さのメルのレビュー・感想・評価

存在の耐えられない軽さ(1988年製作の映画)
4.4
チェコの作家ミラン・クンデラの小説を映像化したもの。

外科医トマーシュは複数の女性と関係を持つことが唯一の生きる証しであるかの様な遊び人の男。
たまたま知り合ったテレザは田舎育ちの純情な娘。
この2人が人生を共に生きていく中で「存在の耐えられない軽さ」とは一体何を指すのだろうか。

次から次へと女と関係を持って流されて行くトマーシュの生き方がテレザにとっては「耐えられない軽さ」なのかと勝手に思っていたが、どうやら違うらしい。

時代は1968年、共産政権下のチェコスロバキア。プラハの春。

クンデラはチェコ共産党の批判をし、それに影響を受けた学生がデモを行ない、警察隊がデモを鎮圧、そんな時代。

「一度きりの人生は再現出来ないから本当は何が正しいのか判断出来ない。そんなたった一回だけの人生に意味が有るのか」
「人間や歴史の存在は耐えられなく軽いものである」
これらは原作の中にある文章らしいが、何となく虚無的で悲観的な思想が現れている。

それを知った上でこの作品をもう一度見ると、トマーシュの手当たり次第手を出す女遊びもそれなりの理由があっての事として納得出来てしまうし、彼が自分の人生で選択した結果をそれがどんなにキツイものでも潔く受け入れる「不屈の人間」として描かれていることに気がつく。

トマーシュ(ダニエル・デイ・ルイス)がソファーに座り脚を組む、その脚の長こと! きゃっ!

テレザ(ジュリエット・ビノッシュ)のはち切れんばかりの頬に若さが漲りクルクル動く瞳に純朴さを感じる。

トマーシュの長年の愛人サビーナ(レナ・オリン)の洗練された美しさは女性の憧れかもしれない。

色々な解釈がされるラストも結構好き。
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