Shelby

存在の耐えられない軽さのShelbyのレビュー・感想・評価

存在の耐えられない軽さ(1988年製作の映画)
4.7
以前知り合いがこの映画から生き方を学んだ、最高の映画だと豪語していた。理由あって彼ともう会うことは無い。
そんな彼の人生の1本だと言わしめたこの映画を見ようと、1度はDVDを借りて鑑賞していた。しかし、内容にピンとこず、途中で見ることを辞めてしまった。多分当時は人間関係にあまり敏感ではなかったからだと思う。

出会いと別れを繰り返すことで、学ぶことは沢山あった。愛し合う多幸感やひとりがふたりに増えるという意味。嫉妬や不安。そして、ひとりの身軽さや、ひとりの寂しさ。今回見返すにあたり、当時よりも見る目が変わっていたことに気付いた。
そして私にとっても大切な1本になったことも、断言してもいい。それほど、影響力のある1本だと思えた。

浮気者で女漁りに余念が無いトマシュと純情で可愛らしいテレーザ、そして自由奔放でとにかくエロいサビーナ。
この3人で構成される物語。トマシュは色んな女に服を脱げと命令しちゃう俺様な男。のはずなのだが、女と同じベッドで一晩共にしないと断言していたにも関わらずテレーザとはすんなり同棲できている。
トマシュへの嫉妬で悪い夢をみたテレーザに夜中起こされようと、優しく指にキスをしてテレーザが安心するように耳元で囁きながら眠りにつく。
テレーザへの愛の深さが窺える。今までの女性にはない行動だ。

「人生が二度あれば、一度は同棲して、二度目は追い返すさ。でも、人生は一度きりで、修正が効かない、儚いものなんだ。」
トマシュのこの言葉が胸に突き刺さる。
そう、人生は誰にでも平等で、1度きり。だからこそ、後悔のないよう生きねばならない。そんなこと改めて言われなくても分かっているつもりだった。
けれども、その言葉が彼の信条なのだと思うと、私はそれを本当に理解して、生きていたのだろうかと自ずと自分自身に問い掛けていた。浮気はダメ、不倫もよくない。色んな人と関係を持つなんて以ての外。
今作品では、そんなことを推奨しているのではなく、本当の意味で、人生を楽しむことが出来ているのか。そんなことを考えさせられた。
車の中で幸せそうに微笑む2人。
「何を考えているの?」「どんなに幸せかと。」トマシュからそんな台詞が出ようとは。涙こそ出なかったものの、胸の中に熱いものが湧き上がる感覚に陥った。
幻想的でとても、美しいラスト。

他人からは軽いと思われようと、私は私の人生を、そして儚い一度きりの人生を、懸命に生き抜きたいと、そう強く思えた。
Shelby

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