このレビューはネタバレを含みます
激動の時代に生きた ひとりの男とふたりの女。
〝人生はわたしにはとても重いのに
あなたにはごく軽いのね
わたし その軽さに耐えられないの〟
結婚してもなお他の女を抱く彼に残した手紙。
愛とセックスは別物で、セックスは軽いものだと彼は言う。彼女も他の男に抱かれてはみるが、涙をこぼす。彼女には彼のこの「軽さ」が、身をもってしても解らなかったのだろう。
去って、戻って、また去って。
彼女の言う、〝自然な愛し方〟に思わず頷いてしまった。
嫉妬もせず、何も注文もせず、見返りを求めない。でも実際には何かを期待して求めてしまうし、嫉妬もしてしまう。愛のままならなさ。愛するが故、でも愛しているからこそ、彼女の言う自然な愛しかたが出来たらいいのに。ひとはどうしたって、愛に揺さぶられながら生きてくしかないのかもしれない。
ラストでふたりを襲った突然の死。
しあわせだ、と思えたまま最期を迎えるなんて、正直あたしは羨ましさすら感じてしまった。彼の優しい笑顔と、甘く幸せそうな彼女の横顔と。美しかった。