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肉屋のnのレビュー・感想・評価

肉屋(1969年製作の映画)
3.7
映画全体に不気味な雰囲気が漂う。
校長エレーヌと出掛けた子供達の昼食場面、生徒のパンに落ちてきた血。子供を使うことでより恐怖感を感じさせるものとなっている。
葬儀の場面ではポポールだけが土を棺桶にかけない。最後まで見れば、これがヒントのひとつであったと気付くだろう。伏線やヒントを散りばめており、非常にシンプルな方法ではあるがサスペンス性の表現が秀抜である。派手で複雑であるより、分かり易いシンプルな方がより不安感を駆り立てる。
死体を発見した際、普通の人間ならば驚くであろう場面で冷静な様子のエレーヌ。そうかと思えば、瓶に入ったチェリーを持ってポポールがエレーヌの元へやってくる場面では、死体付近にあった彼にあげたライターに気付き、笑いが混ざったような不気味な泣き出し方をする。彼女の感情の出るタイミングが異常で、この女性の異様性を読み取ることができる。
病院へ向かう道をエレーヌはなんだか遠回りしているのに見え、ポポールの死を待っていたかのようだった。ポポールが運ばれ、赤いボタンを顔色一つ変えずただ見つめる。点滅するボタンもポポールの死を暗示し、観客の心理を読んだ技法だ。

感情の掴めないどこか人間らしくないエレーヌが一番気味悪い存在。
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