拝啓
私が音楽というものに興味を抱き始めた90年代半ば頃というのは、様々なアーティストたちがひしめき合いしのぎを削り合っていました。
今では考えられないほどCDの売り上げが天井知らずの時代、雑誌やテレビの音楽ランキングチャートの上位にはいつもあなたの名前がありました。
学校でも街でもメディアでも最新の情報が逐一耳に入ってくるほど、あなたはまさしく時代の寵児でした。
同性のアーティストならまだしも異性のアーティストで新曲を楽しみにしていた人はなかなかいません。にもかかわらずタイトルもメロディも歌詞も瞬時に頭の中で再生できるあなたの楽曲は、この映画の主題歌の "Damage" を筆頭に数多くあります。
飛ぶように売れたキャリア初期の曲も、結婚式の定番ソングも、ファッショナブルなMVで有名な曲も、個人的に最も好きな "Love Story" という歌も私の中でいつのまにか消え去ってしまったり風化してしまったりということは決してないでしょう。
自分が一番音楽を聴きこんでいた時に頂点を極めていたアーティストでスッパリときれいに辞めていく人はもしかするとあなたが初めてかもしれません。
第一報を聞いた時、歌声だけでなく引き際まで美しいなと純粋にそのように思いました。
曲を耳にするだけで自分の青春時代をも同時に思い起こさせてくれるような数々の名曲をどうもありがとうございました。
25年間おつかれさまでした。
敬具
安室奈美恵様