滝和也

殺しの烙印の滝和也のレビュー・感想・評価

殺しの烙印(1967年製作の映画)
3.8
女を抱いてきたのか
あたりきよ!
湯たんぽを抱きな!
バーン!

これはクビになるよな…

「殺しの烙印」

わけのわからん映画を撮るな!

当時これをみた日活社長が監督である鈴木清順を叱責し、電話一本でクビにし、訴訟が起こったと言う曰く付きの傑作。

癖が凄い…いや凄すぎる…。

これは確かにヤバい…。当時最新のヌーヴェルヴァーグの前衛的な表現をハードボイルドに大胆に融合した清純美学が炸裂、ストーリーは大和屋竺他多数が手がけ、これまた前衛的な強烈キャラが暴れ回る様なストーリー。冒頭は主題歌ですが、もう狂ってる(笑) 新世代が新しいと絶賛するも、旧来の作品を信奉する社長からクビにされても致し方なし…。

殺し屋ランク№3の花田(宍戸錠)は組織から謎の男の護送を依頼される。だがランク№2と4のチームに襲われ、相棒は殺されるが、謎の男に助けられ、2人を倒し伸し上がる。それも束の間、死に取り憑かれた美しい謎の女美沙子(真理アンヌ)に依頼されたヤマでドジを踏んだ花田は組織に追われ、幻の№1に付け狙われる…。

どいつもこいつもメチャクチャなキャラクターで癖が強すぎる。主人公花田は飯の炊ける匂いが好きで、炊飯器を抱きしめる。謎の女は何故か死にたがり、蛾の標本だらけの部屋に住み、花田の女房はほぼ全裸w。そして№1は狂ってるとしか思えない方法で花田を追い込む…。このキャラが狂乱の演技と演出で更に迷宮に迷い込ませる…。

ある意味マンガチックなのだ。劇画のブラックユーモア的。大和屋竺はこのプロットを参加したルパン三世のファーストで使用しているフシがある。魔術師と呼ばれた男が何となく似ているし、雰囲気やテンポが似てますから。

宍戸錠は前半はエースの錠らしさをハードボイルドに見せてくれるが、自分より上手な美沙子や№1に追い込まれ、困惑し、狂い泣き叫ぶシーンが多く、二面性が魅力ですかね…。

そもそも成人映画として作られているだけに、ヒロイン真理アンヌ様も…美しすぎる姿を披露。その棒と言うか、機械みたいな演技含めて悪魔のようで、エースの錠を泥沼に引きずり込む…。また狂ってる淫売婦を、演じる小川万里子は裸の方が多いという…しかも延々吠えてるし。

何か初期ポランスキーの匂いがするのは何故なんだろう?話が狂ってるからか、主人公が狂わされていくからか。その狂気がまた振り切れた作風を維持しているんですよね。確かにこいつは当時の日活の社風とは合ってない。日活は現代アクションに古今東西のカッコイイもののモチーフをぶっ込んだ無国籍アクションが本筋。余りにも違い過ぎだし。ただ邦画の歴史から考えたら、大事な作品かも知れません。その作家性の爆発は凄まじいですからね…
滝和也

滝和也