たけのこ

晩春のたけのこのレビュー・感想・評価

晩春(1949年製作の映画)
4.0
旅先の京都の宿でマリッジブルーになる紀子を優しく諭す父親のシーンが秀逸でした。娘の幸せを願ってやまない周吉の親心と暖かい眼差し。こんなお父さんがいれば離れたくないという娘の気持ちも分かります。これからお嫁に行く女の子や、嫁いだ先で今日までを暮らしてきた奥さん方、娘を送り出したことのあるお父さん方が観れば感涙モノだと思います。

周吉役の笠智衆さんの、素なのか演技なのか分からないようなトボケた感じがとてもいい味出してました。

ところどころに上品なユーモアが散りばめられており、劇場内でたびたび笑いが起きているのが印象的でした。小津さん、ウケてるよ!
時代や環境の変化は激しいですが、人の心の機微のようなものはそうそう変わらないですね。

映画は時代を記録する。映画女優が銀幕のスタアだった時代。原節子さんの大写しが多く、女優映画という側面も多分にあるように思いました。

インターネットどころかテレビすらなく娯楽の少ない時代、劇場のスクリーンで観る美人女優はまさに雲の上の存在であり、当時の大衆にとって今の時代からは想像できないほど素晴らしい体験だったのだろうと思います。身のまわりにモノや情報があふれる時代、新鮮な感動を見つけることはだんだん難しくなっているのではないか、本当の幸せって何だろう?と、そのようなことも考えさせられました。

紀子と服部さんとのツーショットは、絵ヅラ的にイングリッドバーグマンとゲイリークーパーを意識した感じでしたが、クーパーの方はまさにそのままネタにされてましたね。でもあくまで「ふんいきクーパー」という感じで、ハリウッド俳優と比べるには若干貧相な感じもしました(笑)
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