物質転送装置の開発を推し進めている科学者が、失恋の痛手を払拭させるべく自分自身を実験台にしてしまう。1958年度「ハエ男の恐怖」をリメイクしている、サスペンス・ホラー。
表面上ではホラーに位置付けられるが、実質的には惨たらしい悲恋劇を描いている、ラブ・ストーリー。「こんなはずではなかったのに」という、やるせなさと切なさが全編を支配している。
原典「ハエ男の恐怖」は、変態の過程を回想シーンに留めている作劇だが、本作では時系列に合わせてドラマが展開する。主人公の身体の変調が精緻に描かれており、空前絶後のショッキング性を堪能することができる。
ハエ男のグロテスクな特殊メイクと重力を無視したアクションが記憶に残る。筆者が子供の時分、主人公のアゴが外れて落ちるシーンが、テレビCMで仕切りに放映されていたため、軽くトラウマになっている。「80年代、後に引きずる系映画」の代表格。
