Maki

モダンボーイのMakiのレビュー・感想・評価

モダンボーイ(2008年製作の映画)
4.5
日本統治下の京城が舞台。日韓の文化が融合した街の雰囲気が独特でした。

京城の総督府に勤めるシンスケとへミョンは、かつて東大で一緒に学んだ仲。国を超えて絆を深めていた彼らでしたが、へミョンが反日運動家の女性に一目惚れすることで、徐々に関係が崩れていきます。

極端な反日映画ではなく(...まぁ反日気味かもですが) 、広い視野で時代を捉え 映像に落とし込んでいる印象。日本人でも比較的観やすかったです。
ラブストーリーは勿論のこと、複雑な日韓関係の中で親友を信じ続けようとするシンスケの姿も(日本人的には)印象深い。

日本を憎む者もいれば、日本人と良い関係を築いていた者たちもいるーー、
当時の情景をありのまま描こうとされていたところに好感が持てました。
一方で旭日旗が掲げられていたり、君が代が流れる場面もありとドキッとさせられる。

戦争、恋愛、友情と描かれる中で、どこに焦点を当てて鑑賞するは人によるかと思いますが、私はシンスケとヘミョンの「男の友情」に注目しながら鑑賞していました。関係が崩れていく中でシンスケが「私たちの友情を続けることは難しいか」とヘミョンに尋ねるシーンがあるのですが、ヘミョンは「僕は朝鮮人で、君は天皇の臣民だから(無理)」と答えるんです....( i _ i )
その台詞は私の心にもグッサグサに刺さってしまい、鑑賞を続けられず一時停止してしまったくらいに傷つきました。日韓関係良い時も悪い時もあるけれど民間人同士は良好なままでいたい!と思っている私は彼の一言でボロボロに....(ヘミョンは一等書記官、シンスケは検事なので民間人とは言い難く、ヘミョンの言い分も理解できるのですが)。
それまで日韓関係なんだかんだ上手くいくだろうと軽い気持ちで生きていましたが、ヘミョンのこのセリフがきっかけとなり、韓国語を日常会話程度はできるようにしたいと勉強を始めました。「自分の力で韓国という国を理解したいし向き合いたい!」と。そういう意味では私と韓国語を繋ぐきっかけを作ってくれた映画でもあります。

そしてヘミョンから日韓の友情を拒絶されるシーン。日本人役を演じた私の推し・キムナムギル さんもインタビューで「胸が痛んだ」と語っておられました。ヘミョンに拒否られた時のシンスケの辛そうな瞳が忘れられない!
そういう意味では、ヘミョンもシンスケもナンシルも等しく戦争の犠牲者なのだなと思わされました。

陽気なヘミョンの性格も相まって コミカルなシーンも多く、重苦しいだけの戦争映画ではありません。ストーリーだけでなく、街の雰囲気や?各キャラクターの心情にも目を向けて鑑賞したい作品です。

(追記1)どうやら当時領土問題のために日韓関係最悪だったらしく、シンスケの登場シーンが大量にカットされたとのこと。「ユキコ」という、シンスケの恋人についても描かれていたらしいのですが、本作では存在すら描かれていません。シンスケ役を演じたキムナムギルさんは、ご自身が情熱を持って演じた場面が大量にカットされてしまったことを残念に思っているとインタビューで語っています。しかし監督の考えであれば尊重すると...。
戦時下の日韓の若者の関係を描いた映画であるという側面を持ちながら、領土問題に左右されてしまったことは残念でした。

(追記2)キムナムギルさんのインタビュー動画を鑑賞したところ、「1番心に残っているのはヘミョンから"僕は朝鮮人で、君は天皇の臣民だ"と拒絶される場面です。シンスケとして、日本人としてその場面を表現しようとした時、とても苦しく胸が痛んだ」と話しておられてハッとしました。戦時下の日本人役、容易くなかったと思いますが、日本人の立場に立って演じることを大切にされていたことが伝わってきました。推しよ、当時の日本人の立場に立ってたくさん悩んで考えてくれて、ありがとう!
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