Kumonohate

グラマ島の誘惑のKumonohateのレビュー・感想・評価

グラマ島の誘惑(1959年製作の映画)
3.9
1945年、太平洋の孤島アナタハン島に漂着した1人の女性と32人の男性が共同生活を送るうち、やがて女性をめぐって男達が争うようになり、1951年に救出されたときには13人が死亡あるいは行方不明になっていたという「アナタハンの女王事件」。それをパロディにした戯曲「ヤシと女」を原作とする、川島雄三監督によるブラック喜劇。

登場人物は、皇族・軍人・現地人(に身をやつした脱走兵)・慰安婦・女流画家・女流小説家・未亡人に置き換えられおり、もちろん島は日本そのものの風刺である。天皇制・戦争・戦後民主主義・原水爆・沖縄問題等が強烈に皮肉られている。ただし、だからといって「反戦」とか「反核」とかいった明確な一本筋の通った思想があるワケではない。世の中のモノを手当たり次第に笑い飛ばし、バッサリやっている。やはり川島監督作品、森羅万象に対して常に斜に構え、運命やヨノナカを呪っているように思える。

森繁久彌、フランキー堺、桂小金治、三橋達也、浪花千栄子、轟夕起子、春川ますみ、宮城まり子、八千草薫、淡路恵子、岸田今日子といった錚錚たるメンツが、現在の倍以上の早口でまくし立てるスラップスティック・コメディー。それだけでも観る価値充分である。
Kumonohate

Kumonohate