Keiko

赤と黒のKeikoのネタバレレビュー・内容・結末

赤と黒(1954年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

本を開くと、ページにクレジットが印刷されていて、それをめくる度にスタッフの名前が現れるという手法が古典文学に似合っていて良い。
また、本編の合間に何度も本のページが画面に映し出され、原作者スタンダールをはじめとする文学者の言葉が引用される演出もなかなか面白かった。
ジュリアンが赤い軍服を身につける前編と、聖職者として黒い服を見に纏う後編の二部構成で、視覚的にも赤と黒が表現されている点にも注目。

『赤と黒』、物語そのものはあまり好みではないんだけど、古典文学の中ではマストで押さえておきたい作品の一つ。
ラブシーンは同じくジェラール・フィリップ主演の『危険な関係』(1959)と若干被る。

序盤、裁判でジュリアンは言う。
「だが私はこの罪によって罰せられるのか、そうではないのです。あなたがたにとって私の罪は、下層階級の私が這い上がろうとしたことだ。私の首を斬るのは、貧困な階級に生まれ、幸い教育の機会に恵まれ、上流階級に入ろうとした、全ての青年を罰することなのです」
この言葉を聞きながら、ポン・ジュノの『パラサイト』(2019)を思い出した。赤と黒の原作は190年も昔の小説なのに、根本的なメッセージが似通っていることに、人間社会の愚かさを垣間見た気がする。
貧困層に生まれた主人公が、他者を陥れて人を騙して上へ這い上がろうとする点も同じ。そして最後は裁かれる。

それにしても、ジェラール・フィリップは本当に美しい俳優だ。どう見ても23歳には見えないけど、それでも主役にふさわしい。
ダニエル・ダリューは、レナール夫人のイメージとはちょっと違うかも。もう少し若い頃の方が似合っていたような。ジュリアン役のジェラール・フィリップがこの時すでに32歳とかだから、歳の差を表現するためにも仕方ないか。
Keiko

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