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ランボーのkkmovoftdのレビュー・感想・評価

ランボー(1982年製作の映画)
3.7
なんとなく話には聞いてたけど、この一作目は世間的なランボーのイメージとはかなり違って、ひたすら惨めでかわいそうな話。何となくシリーズの流れとして、素晴らしいけど地味な一作目からシリーズ化でエンタメ大作に、という流れは、エイリアンの一作目がSFパニックじゃなくむしろスリラーだったのに近いかも。昔イギリスでもフォークランド紛争の帰還兵が殺人を起こして山籠り、警察が手も足も出なかったって事件があったと思うんだけど、今検索しても何も出てこない。夢だったのか、それともこれも別の映画の話だったのか。

『ディア・ハンター』とか『ローリング・サンダー』とか『ウェルカムホーム・ソルジャーボーイズ』みたいな、所謂ヴェトナム帰りもの。わざわざヴェトナム帰還兵の苦難をここで述べるまでもないけど、でもヴェトナム帰りに限らずとも、現代でもこのランボーのように破綻寸前の精神の均衡をギリギリのところで必死に抑えながら、平静を装って懸命に生きてる人は少なくないんじゃないかと思う。そんな人に悪意をもって接したらどんなに悲しいことが起きてしまうか。どんなに必死に守ってきた均衡も、一度崩れてしまえばそれを取り戻すには信じられないほどの時間と手間が必要になる。
小林正樹の『切腹』でもそうだったけど、少しでも社会的優位に立っているように見えると途端に相手を見下す、というのは本当に浅薄で唾棄すべき態度だと思う。そんなものは全て偶然の上に成り立つ砂上の楼閣に過ぎないのに。誰かが苦しみながらも懸命に抑えてきた均衡を、心無い態度や言葉で台無しにしてしまうなんて、そんなことはあってはならないことだと思う。この映画では彼が元グリーンベレーだったから仕返しもここまで大きくなったけど、誰にだって誰かを傷つけることくらいわけなく行えてしまうのが我々人類なわけで、ひょろっとしたダビデが簡単な道具でたやすく筋骨隆々のゴリアテを斃したことは周知のこと。

ラストでランボーがかつての上官に抱きつきながらオイオイと泣くシーンは本当にかわいそうだった。こんなに暗いヴェトナム帰還兵ものの映画がほんとに当時アメリカでヒットしたのかなと思ったら、興行収入はあんまりだったみたいですね、やっぱり。でも無口無表情のスタローンの内に渦巻く昏い感情がジワジワと滲み出てやがてバイオレンスとして発露する流れは見事で、思ってたより全然素晴らしい映画でした。FunkadelicのMarch to the witch's castleを久しぶりに聞こうかしらね。
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