河豚川ポンズ

ランボーの河豚川ポンズのレビュー・感想・評価

ランボー(1982年製作の映画)
3.9
報われない英雄の怒りな映画。
ちょうど新作の製作をしてるっていうもんですから1からおさらいを…と思ったらほとんど観た記憶が無いんで、いざ観てみたら全然覚えてなくて勝手に観た気になってたし、思っていたのとまったく違った。

山間の田舎町に一人の男がふらりとやってくる。
男の名はランボー(シルベスター・スタローン)、ベトナム帰還兵でありグリーンベレーに所属していた、まさに戦争の英雄だ。
彼はかつての戦友たちを訪ねてこの町へとやってきた。
ただそんな男もこの田舎町にとっては流れのよそ者、町の保安官のティーズル(ブライアン・デネヒー)はランボーをトラブルを起こしそうな男だとして、町から追い返そうとする。
しかしただ食事を取りたいだけのランボーは町へ戻ろうとする。
ティーズルは従わないランボーを逮捕し、保安官事務所へと連行してしまう。
取り調べが始まるが、それは名ばかりの拷問。
そしてその拷問はランボーがベトナムでの苛烈な記憶を思い起こさせ、無我夢中で保安官たちを叩きのめし、山へと逃走するのだった。

観る前の勝手なイメージでM60をぶん回しながら敵兵を薙ぎ倒してるようなのをイメージしてたけど、実際見てみたらPTSDなんて認知すらされてないような時代での悲しい帰還兵の話だった。
まあ戦うシーンは大方イメージ通りだったし、ムカつくやつが大概ひどい目に合うってお約束はいつも通りだってけど。
ベトナムで国のためと信じて戦ったのにも関わらず、戦争には事実上敗北、いざ帰ってみれば反戦ムードの高まりから非難され、働き口も見つからず社会に居場所がない。
命まで懸けて戦った結果がこの仕打ちなのに、どこにも怒りをぶつける先もなく、仕方なくそんな理不尽を抱え続けてきた帰還兵たち。
この映画はそういったものをテーマにした、想像以上に重い映画だ。

もちろん純然たるアクション映画として成り立ってるわけだけれども、その一方でラストのランボーのセリフに象徴されるような、彼らの叫びはこの映画のテーマに大きな意味を与えてると思う。
そんなランボーを演じるのは何を隠そうシルベスター・スタローンなのだが、その悲痛なメッセージを伝えきるだけの凄みや演技力がここでは溢れていた。
スタローン自身では『ロッキー』以来のヒットとなったそうだが、ただのアクション俳優だけで終わらせない、魅力や演技力が確かに出てるのがロッキー同様にこの映画でもよくわかった。

まあ今では見事なまでに娯楽アクションシリーズと化してることを考えると、やっぱりこの1は色んな意味でシリーズでも別格というか別枠なのかもね。