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結婚相談のakrutmのレビュー・感想・評価

結婚相談(1965年製作の映画)
5.0
円地文子の同名小説を、中平康監督が芦川いづみ主演で映画化。婚期を逃した30歳のOLである鶴川島子は、結婚相手を探しに相談所を訪れる。何人かの男性を紹介され、会ったときの感触はいいのだが、その後にいつも断られてしまう。悲しみにくれる島子は、実は結婚相談所を装った売春斡旋所であることを知り、深みにはまっていくというストーリー。

清楚な役柄が多い芦川いづみが汚れ役を演じるということで、どうしても観たかった映画。念願が叶っただけでもテンションが上がりっぱなしなのに、映画全体を通じて出突っ張りな芦川いづみを十分に堪能することができ、大満足。実生活でも30歳になり、少し小皺が目立ち始めた彼女だが、それでも美しさに全く陰りがなく、汚れ役をやっていても気品が漂う。お見合い相手とうまくいきそうで一人ほくそ笑む表情や、お見合いが上手くいかなくて泣き崩れる姿や、疑似フィアンセとして振る舞う様子など、どの場面を取っても可愛くて素敵なのである。さらに、約束を反故にした罰として結婚相談所の女将から命じられて男性の相手をする後半の場面(今の時代だと、この設定は難しいかも)では、神々しさまで感じてしまう。

もちろん、映画の出来としてもなかなかであるので、芦川いづみがお目当てでない人でも十分に楽しめる映画である。今の時代に30歳で行き遅れなんて感覚はないだろうが、50年以上前はかなり深刻だったのかしれない。そんな当時に、行き遅れのオールドミスを題材に、このようなコメディタッチの映画を制作したのだから、凄いと思う。また、出演している役者たちの演技も見どころである。結婚相談所の女将を演じる沢村貞子の一癖も二癖もある演技はさすがだし、島子の母親役の浦辺粂子のとぼけた演技も相変わらず良い。島子が惹かれる男性・高村役の高橋昌也とか、最後においしいところを持っていく島子の上司役の高原駿雄などの男性陣の安定した演技も、本映画を脇から支えている。島子の弟役の中尾彬や高村の愛人役の野川由美子などは、若すぎて途中まで誰だかわからなかった。
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