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ベニスに死すのRyuのレビュー・感想・評価

ベニスに死す(1971年製作の映画)
3.4
静養のためにベニスを訪れた初老の作曲家 グスタフはそこで見かけたポーランド人貴族のタッジオという少年に目を奪われてしまう。タッジオに何の説明もいらない美の理想を見出したグスタフは彼を追い求めて彷徨うようになる。

主人公が美少年に目を奪われてしまう訳ですが、この2人が直接言葉を交わすことはありません。ここまで“傍観”に徹底した映画は中々見かけないです。それに加え、セリフも少なくて情報もあんまり明示されない感じだったのでちょっと退屈さを感じました。
グスタフがタッジオに惹かれたというのは事実だし、恋心みたいなものもあったかもしれませんが、グスタフはタッジオの美 そのものに恋していたのではないかと思いました。自分は芸術のげの字もわからない素人ですが、芸術や美というものは変態性みたいなものも持ち合わせたものなんじゃないかと思います。芸術家ってどこかぶっ飛んでいる人が多いイメージありますしね。そんな中、グスタフはけっこうちゃんとしてるというか、自重やバランスを重んじる人だと思いました。その性格は芸術家としてはちょっとしんどかったんでしょうね。そうやって芸術・美という概念に頭を悩ませていたところに、なんの説明もいらない究極の美を見つけてしまったんだから、そりゃどっぷりハマっちゃいますね。
自分は感受性がよくないし、抽象的な表現もどっちかと言うと苦手なので、この作品の魅力を存分に感じることはできなかったのですが、ビョルン・アンドレセンの凄まじい美しさやそれを魅せる演出だけでも映画として完成してしまってると思いました。
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