Omizu

ベニスに死すのOmizuのレビュー・感想・評価

ベニスに死す(1971年製作の映画)
4.0
【1971年キネマ旬報外国映画ベストテン 第1位】
ルキノ・ヴィスコンティの代表作。主人公が出会う美少年タッジオを演じたビョルン・アンドレセンがあまりに美しいと世界で大人気になった。カンヌ映画祭にも出品され、アカデミー衣装デザイン賞にもノミネートされた。

全部理解できたかというとそうではないが、結局冒頭のいちご売りのシーン、「夏は暑いから生果物はすぐ腐る」というのが一つのテーマだろう。

なぜか不機嫌な主人公。そこにビョルン演じる美少年タッジオが現われる。直接話すこともなく見るだけ。しかし向こうからも誘惑するような視線が投げかけられる。

一つはおそらく、感覚より理性派の作曲家である主人公が、少年と出会ったことにより知的制御が効かなくなってしまうという皮肉な話だと思った。

そしてもう一つは失ったものへの悔恨でしょうね。芸術的才能の枯渇、娘の喪失、そして若さの喪失がトリプルで彼にのしかかった。

最後世にも哀れな姿で亡くなる作曲家。必死に抗おうともがいた末の死。儚く哀れだ。

全編セリフはほとんどなく、カメラ位置や視線で伝えていく表現が見事。美術や衣装は流石ヴィスコンティ。マーラーを使った音楽によりますます高貴さと憐憫が誘われる。

観る前はもっと同性愛的な描写があって流麗な感じの映画かと思っていたら、それもあるけど全てに死の匂いがする不気味な作品であった。ヴィスコンティの美学が遺憾なく反映された傑作。
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