嵐の近づく劇場にて。
劇場の灯りが落ち、マーラーの交響曲第5番第4楽章のアダージェットが流れだすと、スクリーンに監督名のクレジットが映し出される。
朝焼けの海を行く汽船。もちろん現代的なシャープな絵造りではないが、フィルムの粒子を感じさせる柔らかな映像美。
この一連の流れだけで、観客はヴィスコンティの世界に絡め取られてしまう。
40年ぶりに劇場で見ることができました。やはり良いですね。
しかし、不思議な映画です。全編の半分以上は、初老のおっさんのアップ。それでいて、観客を飽きさせないのだから。
砂が残り少ないのに気付くのは、終わりのころだ。
この映画を観ていると、無性に煙草が吸いたくなります。
せっかく止めたのに。