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ベニスに死すのmomohideのレビュー・感想・評価

ベニスに死す(1971年製作の映画)
4.0
「砂の落ちる通路は非常に狭い、最初のうちはいつまでも砂の量が減らない様に見えた 砂が残り少ないと気づくのは いつも終わりの間際だ」

「天才は天からの授かりもの いや違う
天与の狂気 自然が送った罪深いひらめきだ」


今回は2つチョイス。



あー、これわたしにはまだ早過ぎたやつだ。
映画は観る側の年齢や経験で受け取り方が変わるってのがよく分かる良い例。
バグダッドカフェで宿泊客の女の人が読んでたやつねこれ。


おっさんが絶世の美少年をストーキングする映画。
と言ってしまったらそれまでなんだけどー。
おっさんが美少年に恋をしてどうにかしてやりたいぜ ぐっへっへ!とかそんな低俗なお話では断じてないのは確か。
じゃなきゃこれほどまでに名作とは呼ばれないだろう。


天から授かる「美しさ」は永遠ではない。
今はもう自らの元から去ってしまったその「若さ」や「美しさ」を美少年タッジオに見出し、その執着が彼を突き動かした。
美を追求する芸術家の執念てば凄まじい。
死化粧をしたおっさんが後ろを付いてくるって普通であったら恐怖以外の何物でもないのだが、タッジオも満更ではない感じがする。
これほどの美少年、おっさんでなくてもほっときはしないだろうけど。


追い求めた究極の美を見つめながら終わる彼の最期は芸術家にとって本望な最期であったのだろう。

わたしには物語終盤、疫病の蔓延するベニスの街のディストピア感が堪らなく美しく思えた。
ただクローズアップが多い、もうちょいなんか無かったのかとも思う。


さてさて、
今年で28歳 妻子持ち、まだまだ若いと信じて疑わないわたしの砂時計、
もう少し減ったらまた観てみたいと思う。
そしたらこのおっさんのこともっと理解出来るだろうからね。
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