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ベニスに死すのriverのレビュー・感想・評価

ベニスに死す(1971年製作の映画)
3.3
タジオ役のアンドレセンは、トーマス・マンの原作と比べても見劣りしない美しさで、映画をより幻想的なものにしている。以下、原作の登場シーンを抜粋(新潮文庫・高橋義孝訳)

“この少年のすばらしい美しさにアシェンバハは唖然とした。蒼白く優雅に静かな面持は、蜂蜜色の髪の毛にとりかこまれ、鼻筋はすんなりとして口元は愛らしく、やさしい神々しい真面目さがあって、ギリシア芸術最盛期の彫刻作品を想わせたし、しかも形式の完璧にもかかわらず、そこには強い個性的な魅力もあって、アシェンバハは自然の世界にも芸術の世界にもこれほどまでに巧みな作品をまだ見たことはないと思ったほどである。”

原作では病弱そうなタジオだったけれど、映画ではコレラが蔓延し、醜悪さを増すヴェネチアの中でも、美しさは変わらない。アンドレセンの配役は見事だけれど、ヴェネチアの景観やマーラーの5番ともバランスが取れていないように感じ、居心地が悪いと感じてしまうところもあった。
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