ワンコ

ベニスに死すのワンコのレビュー・感想・評価

ベニスに死す(1971年製作の映画)
5.0
【リド島の海岸】
 
若さと老い、
果たして老いは醜いものなのだろうか。
髪を染め、化粧をしても、あの醜悪なギター弾きとさして変わりはないではないか。

魂を悪魔に売り渡さないと良い芸術はできないのか
道徳と背徳
家族と孤独
美しい少年と老いてゆく男
売春婦の弾く抑揚の無いエリーゼのためにと、タージオの弾く溜めのあるエリーゼのために
山間の風景と海
喧騒のベニスと、人々が立ち去ったベニス
様々な対比が繰り返される

タージオのアッシェンバッハを見つめる瞳
タージオはアッシェンバッハの中に一縷の美しさを見たのではないか
美しさとはうわべではなく内面にあるのだと
美しさとは矛盾の上にあるのではないと
アッシェンバッハはタージオの美しさに惹かれたのではなかったか
しかし、それは愛に昇華していく

エンディングのタージオに降り注ぐようなリド島の海岸の海のきらめきは美しい
アッシェンバッハは髪から染料が溶け落ちて死んでゆく
しかし、美しさは何かを知って息絶えたようにさえ見える
二人の指の指し示した先には何があるのか
二人を結びつけたサインなのか

これを観て、リド島の海岸に行ってみようと思った

多分、生まれて初めて少年に対する愛情を観たのはこの映画だ。
美少年とは、タージオのことだとも思った。

感慨深い映画だ。
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