カツマ

遠い空の向こうにのカツマのレビュー・感想・評価

遠い空の向こうに(1999年製作の映画)
4.5
天空へと続く夢の道。それは登るにはあまりにも険しくて、その急勾配を前にたじろぐことしかできなかった。しかし、もう動き出した針は戻らない。走り出した脚は止まらない。どんなにそれが遠くても、周りに不可能だと揶揄され続けても、希望という名のシンボルを奪うことなど出来やしない。だってそれは人生の扉を開く時、遠い空に見えた一番星のような光。

若きジェイク・ギレンホールの出世作にして、実話ベースの映画としても比類なき完成度を誇る、青春ドラマの名品である。元NASA技術者のホーマー・H・ヒッカム・JRの実体験をもとに描く、夢と希望を追い求める青年たちの物語。監督は『ジュマンジ』などハリウッド大作を手がけてきたジョー・ジョンストン。閉塞的な街で夢を追いかけることの難しさと、叶った瞬間の喜びを最大限に引き出した、まだ見ぬ明日へと向かう作品だ。

〜あらすじ〜

1957年、ソ連は人類初の人工衛星スプートニクを打ち上げる。それを見た炭坑街に住む高校生ホーマーは、自らでロケットを打ち上げようと3人の友人と共にロケットボーイズを結成。まず手始めに超小型ロケットを家の庭先で打ち上げるも、破壊された柵が残るのみで大失敗。炭坑の主任でもある父の反対も強く、ホーマーらは街での打ち上げを断念せざるを得なくなった。そこでホーマーは13キロ離れた荒れ地に小屋を建て、そこで打ち上げ実験を行うことを提案し、即実行に移した。
最初はまがい物扱いで白い目で見られ続けたホーマーたちだが、次第に協力者が現れ、打ち上げ実験には多くの人が見学に来るようになり・・。

〜見どころと感想〜

炭坑を守り続けてきた頑固な父、炭坑に入る気はなく、夢を追いたい息子。2人の対立を軸に、それが次第に解きほぐされていく様は非常に感動的で、大袈裟ではない晴れやかさをもたらしてくれる。シンプルだけど無理がなく、山あり谷ありで何度も障壁にぶち当たる主人公たちが、何度でも立ち上がって夢を追いかけ続ける姿は次第に大粒の涙を落とさせる。ただひたすらにロケットを打ち上げたい。そんな純粋な想いが生んだ、青春時代のピュアすぎる願いの塊が詰め込まれた作品だった。

ジェイクは瑞々しい演技で、無鉄砲ながらも夢を追う若者を好演。彼を支援する教師役にはローラ・ダーンが、そして彼と対立しつつも不器用ながら心を通わせていく父親役をクリス・クーパーが無骨に熱演。軸は父子のドラマにあるため、彼らの演技の素晴らしさが、今作に決定的な説得力を持たせることができていた。

何と本編にはホーマーの実際のヒーロー、フォン・ブラウン博士もゲスト出演していて、そのシーンが実にリアルで面白い(笑)
諦めない心。周りから反対されても突き通す信念。それらは若いからこそ実現できた奇跡なのかもしれないけれど、何かを成し遂げるためには絶対に必要な要素でもあると思う。それを教えてくれるには本作ほど素晴らしい物語もないと思うし、いつまでも爽やかな後味が残る、至高の映画体験でもありました。

〜あとがき〜

名作と誉れ高い本作ですが、積み重ねてきたことが最後には報われるシーンは感動的で涙なしには見れませんでした。『遠い空の向こうに』という邦題も素晴らしくて、ロケットに夢を乗せて飛んでいく若者たちの視線の先を感じさせてくれますね。

夢を追うことに躊躇してしまう人、叶わないと諦めてしまった過去がある人、またこれから夢を叶えようとする人、そんな人たちに特に見てほしい作品。エンドロールに待っている実際の彼らの写真が、夢の証明のように光り輝いて見えましたね。
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