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揺れる大地のleylaのレビュー・感想・評価

揺れる大地(1948年製作の映画)
4.4
何年も前に映画館で鑑賞。当時、ヴィスコンティの絢爛豪華で退廃的な貴族映画にハマっていて、ヴィスコンティだから観ておこうぐらいの軽い気持ちで足を運んだ。
ところが、対極の貧しさが全面に描かれたほぼドキュメンタリーのような作品だったことに驚いた。

シチリアの漁村で生きる家族の貧困さが淡々と描かれ、これでもかというぐらいに転落していく。滲みでる悲哀と、たくましく生きる人たち、どうにもならない社会のしくみ、やるせなさの連続。

キャストは全て島民だというからリアルさが違う。

ヴィスコンティ2作目の作品で、この後いわゆる貴族映画をどんどん製作していくのだけれど、この作品は貴族出身の彼にとっての通過儀礼のようなものだったのかもしれない。

この作品が根底にあるからこそのヴィスコンティ映画の数々なのだと思った。当時のイタリアの社会情勢に映画を通じて訴えかけているメッセージ性も感じる。

映像は、貧しい家も漁師たちも、海も、モノクロームで美しく、古さを感じさせない素晴らしいものだった。ますますヴィスコンティが好きになった1作。
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