great兄やん

炎628のgreat兄やんのレビュー・感想・評価

炎628(1985年製作の映画)
5.0
【一言で言うと】
「“生きる”という地獄」

[あらすじ]
ドイツ軍に占領された白ロシア。 その村に住む少年フリョーラは、戦場跡で拾った銃を手に、打倒ドイツのためパルチザン部隊の参加を決意する。 戦場に一歩踏み込んだ彼は、そこでドイツ軍の蛮行の数々と彼らが起こした悲劇を目の当たりにする...。

※再鑑賞レビュー
(初鑑賞日:2017年12月30日)

記念すべき1100本目のレビューはこちらの作品を…

超絶大傑作。未だにこれを越える戦争映画に出会えたことがない。

たとえ再鑑賞であろうが今作の持つ“陰惨さ”は変わりなく鮮度を保って眼前にへと広がっていきましたし、戦争によって殺されるよりも、戦争の中で“生き続ける”という事がどんなに苦しくて地獄なのかというのをただただ思い知らされた。

“阿鼻叫喚”とはまさにこの事。ナチスに対するロシアの“怨念”をこれでもか!というほど浴びせられましたね(・・;)...

とにかくドイツ軍の繰り出す凄惨な行為の数々にただただ言葉を失ってしまう。
もはや“酷い”という感情すらも容易く捻じ伏せるようなシーンの衝撃度合いには“教訓”なんて有って無いようなものですし、“戦争から学ぶものなんて何もないんだよ”という無情な訴えすら感じてしまうほど。

それになんと言っても主人公の少年フリョーラを演じたアリョーシャ・クラフチェンコの演技、特に終盤の顔つきに至ってはもう同一人物とは思えない程の焦燥感が漂っており、顔の皺が進むにつれどんどん刻まれていく様は観ていてひたすらに辛いものでした😫...

それから演出面でのリアリティも尋常じゃないですし、終盤のドイツ軍の”蛮行“に関してはまさに”世紀末“そのもの。
大はしゃぎで村人を押し詰めた教会に火を放ち、その悲鳴や呻き声を聞いてゲラゲラ笑うドイツ軍...俯瞰ではなく密接したカメラワークから感じる“生々しさ”というのをありありと体感させられましたね(・・;)

とにかく戦争における“同情”は無意味に虐殺される村人や家畜と同じ、全くもって無価値でありそんなものはあるだけ無駄だと突き付けられる一本でした。

地獄の中で“生きる”という更なる地獄。周りの人間が死に絶えても自分だけが生き永らえるという奇跡はいつしか“責め具”としてのしかかり、逆に死ぬことが“救い”なのだと思わず感覚が麻痺してしまう。

戦争は良くないだとか、戦争は酷いだとか、そんな“薄っぺらい”人にこそ観て欲しい今作。

この映画を観れば、如何に自分が“幸せ者”だったかが分かるはずです...