ギズモX

炎628のギズモXのレビュー・感想・評価

炎628(1985年製作の映画)
5.0
旧ソ連の伝説の戦争映画。

《第二次世界大戦末期、ナチス占領下のベラルーシ。
パルチザンに志願した少年兵が目の当たりにしたのはこの世のものとは思えない残酷な世界だった》

作品全体から地獄を彷徨っているかのような雰囲気が満たされており、人間の悪意が露出したその光景はとても狂気的でとても破壊的。
こんな空気を放つ戦争映画はそうそうない。

ナチスのイカれた言動とそれを直に体験することで変わっていく主人公が本当に衝撃的。
最後の巻き戻しとあの顔が忘れられない。

何かを一歩間違えてしまうと全ての人間がこうなってしまう可能性があることを示している一方で、少年やパルチザンが最後に選択した行動には
「お前らのようになってたまるか」
という意思を感じた。

しかし、この映画を観た時、何が正しいのか、自分はどう行動したらいいのかが分からなくなってくる。

ただ、地獄を体験してもその足を止めることなく、前にへと進んだ彼らの足取りは、悲しくて悲惨だけれど、それと同時に励まされてしまう自分がいる。
そしてこの映画で問いかけていることは"第二次世界大戦時のことだから"で済まされることではなく、今まさに、この時代だからこそ通じるものがある。
少なくともこんな世界はこれだけで十分だ。

イカれた狂気がたびたび目の前に現れるこの世界に生きているからこそ、
それに呑み込まれ、畜生になってしまう前に、
力を尽くして心を見張り、それに抗うしかない。
ギズモX

ギズモX