komo

リトル・ミス・サンシャインのkomoのレビュー・感想・評価

4.3
偶然のなりゆきでミス・コンテストへの出場権を得た幼いオリーブ(アビゲイル・ブレスリン)のために家族全員がオンボロバスに乗り、会場のあるカリフォルニアまで800マイルの遠征をするロードムービー。

この家族、お母さん(トニ・コレット)は比較的常識のある人物なのですが、それ以外のメンツがみんな曲者です。
ヘロインとポルノ雑誌を好む不良おじいちゃん(アラン・アーキン)に、勝ち組・負け組という言葉に異常にこだわるお父さん(グレッグ・ギニア)、訳あって一切言葉を発しないお兄ちゃん(ポール・ダノ)、先日自殺を図ったばかりのゲイの叔父さん(スティーブ・カレル)。

愛がないわけではないけれど、個々の意志が大きすぎるがゆえに衝突しあうことの多いこの一家は、決して円満とは言えない状態から旅を始めます。
おまけに旅の途中で車のクラッチが弱り、自分たちの力で車を押してからでないとエンジンがかからない状況に。
この押しがけ&飛び乗りのシーン、最初はみんな不平をこぼしながらスッタモンダの大騒ぎでやっているのですが、回数を重ねるごとに手慣れてゆき、それが当たり前のようになってゆくのがとても面白かったです。まるで家族の結束度を表すバロメーターのようにも見える要素でした。

道中もトラブル続きで、コンテストの当日の朝には思いもよらない大きな事件に見舞われます。
立ち往生しそうになるも、コンテストの時間が迫っているため立ち止まっているわけにはいきません。絶体絶命の状況になっても手段を選ばず、とにかく前進しようとする家族たち。ほろりと来てしまうような展開になりつつも、湿っぽい気分に浸れないほどの疾走感がこの作品の魅力です。
そして大波乱のコンテストの末の、意外にもさっぱりとしたエンディングも好みでした。

どの役者も濃くて好きだけど、心に傷を持つフランクおじさんを演じたスティーブ・カレルが特にツボです。人間性はしっかりしているのになんとも言えない危うさの漂う、儚くてシュールなキャラクターでした。無口なお兄ちゃんとの奇妙な友情も微笑ましくて忘れられません。
komo

komo