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銀座カンカン娘のkaomatsuのレビュー・感想・評価

銀座カンカン娘(1949年製作の映画)
4.0
落語家を引退し、妻のおだい(浦辺粂子)ら家族と静かに暮らす新笑(古今亭志ん生)と、そこに居候する二人のニート女性、お秋(高峰秀子)とお春(笠置シズ子)。歌が好きな二人は、ある日映画ロケの現場に出くわし、たまたまエキストラ出演をしたことをきっかけに、知り合った白井(岸井明)の誘いで、銀座裏のバーで流しの仕事をすることに…。お秋の恋の行方や、新笑夫妻の生活なども、同時平行で描かれていく。

本作のテーマ曲であり、劇中で何度も歌詞やアレンジを変えて歌われる「銀座カンカン娘」は、今の今まで、笠置シズ子の歌だと思っていたのだが、タイトルクレジットには「唄:高峰秀子」のみ。色々調べてみて、高峰秀子の歌であると、今さら知った次第。演技も歌もこなす、高峰の天真爛漫な存在感がとにかく可愛らしくて、愛嬌たっぷりだ。一方の笠置シズ子は、二人の歌のシーンでは高峰の後方支援としての立ち位置に回り、別のシーンでは、自身の持ち歌「ジャングル・ブギ」「ラッパと娘」を豪快に歌い上げ、キッチリ見せ場をつくっている。さらに、5代目・古今亭志ん生の流暢な落語といい、そうした各々の異なる役割分担が、餅は餅屋と言わんばかりに、本作の絶妙なバランスと見どころをつくっているように思える。

ストーリーとしては他愛のない小品ながらも、映画本来の醍醐味に溢れた傑作だ。それは前述したような、個々の役割分担の明快さに加え、セリフを必要最小限とし、ストーリーの奴隷にならない自由な展開や、物語の場面場面を省略して観る側の想像に委ね、見せ場となる歌やミュージカル調のシークエンスを重点的に描いている点、さらに、サイレント映画のようなスラップスティックな動きなどに、見事に裏打ちされている。特に、白井役の岸井明が、お秋らが居候する家をお邪魔するたびに、その巨体ゆえ、置物や壁掛けなどが次々と落ちていくお約束のシークエンスは、チャップリン風でおかしい。
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