ちろる

やわらかい生活のちろるのレビュー・感想・評価

やわらかい生活(2005年製作の映画)
3.7
家族と恋人を同時期に亡くしたことで、躁鬱を患ってしまった橘優子35歳。
なんとか一人で生きて行こうとしても、何種類もの薬を飲まなければいけない日々で、それを紛らわす為に出会い系で痴漢プレイをしたりしてそれとなしに過ごしている。
この優子のなんとなく住むことを選んだ蒲田の町の描写がとても素敵だった。
優子がブログで書いたように、蒲田って粋のない下町っていう感じ、うむ、まさしく!
といっても私は一度しか蒲田駅を降りたことはないし、「月曜から夜更かし」で得た印象での知ったかぶりではあるけれど、葛飾や足立区のような東の下町と違って、風情はないけど、その代わり孤立した人たちにも優しい印象を持っていた。
そんな全ての人を受け入れる蒲田にある、デパートの観覧車、タイヤ公園、大衆居酒屋、全てが孤独な人に優しい感じがしてとても魅力的だった。

ちなみにこの作品はこのメンヘラ優子を取り巻く男たちもみんな魅力的だ。
痴漢さんの田口トモロヲ、同級生の松岡俊介と大森南朋、ヤクザの妻夫木聡といとこの豊川悦司。
残念な事にトヨエツ以外はほとんどちょい役なんだけど、みんなそれぞれが実に心地よい足跡を残していくから心が解けていく。
一人っきりになって孤独に押しつぶされて心が不自由になったから、ひとりの人と向き合うことをなるべく避けて先のことは考えらなかった優子の「いま」が温かく包まれていくやわらかい生活はとても幸せで微笑ましかったのに、まさかのラストの展開で心がちょっぴり置いてきぼり。

寺島しのぶの演技が良くてどんどん優子の気持ちに寄り添ったからとっても切なくなったので、エンディングはひたすらダメで愛おしくて、セクシーなトヨエツを優子の気持ちで反芻するしかなかったな。
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