ファスビンダー監督作品鑑賞4本目。
こちらが遺作となったサスペンス風メロドラマ。
ウーファ(UFA)映画のスター女優だったジビレ•シュミッツの伝記に基づいた物語。
落ちぶれた女優の後半生が描かれていて、ファスビンダーの生涯と重なるようにも感じて切なくなった。
台詞に「光と影。それが映画の秘密」とあるが、シュバルツェンベルガーのコントラストを強めたモノクロ映像が幻想的雰囲気を醸し出している。ホワイトは白浮きのようにピカピカと眩しく光り、ブラックは塗り潰したようで、強い濃淡が悲しみを演出するのに効果的だった。
1955年ミュンヘン。ある雨の夜、立ちつくす女性に傘を差し掛けたのは新聞記者ロベルト。戦前にスター女優だったベロニカ•フォスだった。彼女はナチス時代にプロパガンダ映画に出ていて、過去にもて囃された感覚が抜けきれていない痛い女でもある。それは眉を見れば一目瞭然。まるで4B鉛筆の一筆書きのような細さで時代遅れなのだった。
輝かしい過去が抜けず、現在は脚本家の夫から捨てられ、豪奢な自宅は差し押さえられていた。精神を病み、すがるしかない神経科女医カッツにマインドコントロールされ、挙げ句にモルヒネ中毒にさせられているのだった。
ロベルトは同棲している彼女がいたが、ベロニカと一夜を共にし、少なからずも愛を感じながら、カッツに不信感を抱き身辺を洗うのだった...
ファスビンダーが時代背景に拘りを持って作られていると感じるのは、ラジオから流れるNATOの話を挿入させたりし、敗戦はしたがアメリカを意識した関係性を覗かせている。
メロドラマとは言い切れない、戦後ドイツの市井の人々(新聞社内の様子、ホロコーストを生き抜いた老夫婦、同棲相手の協力、当時の服装等)を落とし込んでいて興味深く面白く観れました。